新型コロナ「検査不足」の日本が直面するリスク 世界随一の高齢国でなぜ検査は進まないのか

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韓国は1日1万件以上のテストを実施している。対して日本ではそのほんの一部しか行われていない。さらに、日本の当局は、高齢患者が少なくとも2日間(その他のほとんどの人の場合は4日間)発熱している場合のみ、コロナウイルスの検査を受けることを推奨している。

それでは多くの高齢者にとって遅すぎるかもしれない、と東京を拠点とするNPO法人医療ガバナンス研究所の医師兼理事長である上昌広氏は述べる。「私たちが知っている限り、高齢患者が最も脆弱であり、病気になるとすぐに悪化するということだ」と上氏は言う。「間違いなく2日も待つべきではない」。

最も脆弱な人たちを危険にさらす可能性

安倍晋三首相はウイルスの拡散により東京オリンピックが頓挫しないように努めており、検査の制限は政治的な動機による可能性があると同氏は推測する。「安倍首相、あるいは首相の周りの誰かが、来るオリンピックのために感染や、患者数を軽視したいと思っている可能性がある」と上氏は話す。

動機が何であれ、日本の高齢化する人口の約29%、国民の約3600万人が65歳以上であることを考えると、専門家は、今の日本の検査体制はこの国の最も脆弱な人たちを危険にさらす可能性があるという。

「日本は大規模な高齢者の生活施設のようなものだ」と、メンフィス州ナッシュビルにあるヴァンダービルト大学医療センターの予防医学および感染症の教授であるウィリアム・シャフナー教授は話す。「だから、私が厚生相であれば、もっと幅広く検査し、さらに検査を広めたい気持ちになるだろう」。

安倍首相は2月29日、より多くの人が検査を利用できるようにすると約束した。記者会見で首相は、スクリーニングが不十分だったことを認め、政府が国民健康保険計画に手順を追加し、検査を実施する場所を増やすと述べた。

現在、日本は1日に約4000件の検査を実施することができるが、厚労省によると、コロナ危機が始まって以来、検査実施数はその半分以下にとどまっている。このアプローチは、東アジアでウイルスへの感染が発生したほかの地域とは大幅に異なる。

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