就活「人材サービス会社頼りきり」が危険な理由 企業のお金で成り立っていることを忘れるな

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具体的には、学生が集まるイベントへの参加、学生データベースから直接スカウトをかける逆求人(ダイレクトリクルーティング)、エージェント会社を使った新卒紹介などを、積極的に活用する企業が増えています。

企業がこれらを使うメリットは、学生と確実に接点を持つ機会ができるためです。直接の接点を持ち、WEBや会社案内などでは伝えきれない自社の魅力を直接伝え、学生を口説く機会が持てるということが重要で、特に学生への知名度がそれほど高くない企業にとっては、とても大切なのです。

実際に私も、協賛金を払ってイベントに参加したり、エージェント会社を利用したりしていますが、確かにいい学生と直接の接点を持てる機会は多いです。自社の力だけで、いい学生と接点を持とうとするのは、相当の費用と労力がかかるため、こうしたサービスを提供している人材サービス会社の存在をありがたく思います。

その反面、人材サービス会社によっては、ちょっと悪質だなと思うこともあります。それは、まったく学生本位でないやり方をしていると感じられる場合です。学生の就活支援をしているようで、本質的には支援はしておらず、逆に学生を「型」にはめて利益を出すことを目的にしているように感じることがあるのです。

具体的には、学生の意思、考えを十分に引き出すことなく、自分たちにとって都合のいい企業へ入社させるように誘導していることが見られます。

学生を内定させれば60万~100万円の報酬

例の1つとして、新卒を中心に展開しているエージェント会社のことを書きたいと思います。エージェント会社(人材紹介会社ともいいます)の場合、学生を企業に紹介し、その紹介した学生が入社承諾をして初めてお金がもらえます。

相場としては、1人当たりの成功報酬は、60万~100万円の間で、80万円程度の価格設定が多い印象です。体育会系、難関大学、理系など、企業から採用ニーズの高い条件がついた学生は高めの金額に設定しています。反対に、学生が就職に苦労するような、中堅校以下の学生は、安めの金額を設定することがあります。

エージェント会社は、いくら学生と接点をもって仲良くなって、親身になって就活の支援をしても、自分たちが紹介した先の企業への入社承諾がなければ、すべての労力が無駄になってしまうのです。

エージェント会社で働く人たちからもよく話を聞くのですが、すごく親身になって相談にのって支援した結果、その支援をしたことで力を得た学生が、自分たちが紹介した先とはまったく関係ない企業に入社を決め、「とてもお世話になりました。いい就活ができたのは、〇〇さんのおかげです」という言葉をかけられたりするときは、とても心境が複雑だと言います。

いいことができたと思う反面、会社で働くビジネスパーソンとしては、結果を出せていないことになります。よくあることながら、その葛藤に慣れることはないと言います。

そのように悩んでいるような良心的なエージェント会社の担当がついた学生にとっては、悪くない就活ができると思います。しかし、中には、ビジネスパーソンとしての結果にこだわりすぎるあまりに、紹介した企業に入社承諾をさせようと、「積極的に介入」するエージェント会社の担当者もいます。

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