開業50年「湘南モノレール」なぜ住宅街を爆走? 「懸垂式」アピール狙い大阪万博の年に開通

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――逆にこの5年間で達成できていないのは、どのような部分か。

明らかなのは、目白山下駅と湘南深沢駅のバリアフリー化工事が完了していないことだ。加えて、これはわれわれの力不足によるところが大きいが、沿線の皆様とともに沿線の魅力を発信し、観光客を呼び込む取り組みが、現状は十分できていないと思う。

バリアフリー化工事が完了した湘南江の島駅(筆者撮影)

例えば、江の島に関して言えば、新江ノ島水族館とタイアップしてお得な切符を販売するようなことはうまくいっているが、当社の駅から江の島に至る洲鼻通り商店街の魅力はまだまだ発信できていない。また、大船は活気ある商店街をはじめ、大船観音寺、フラワーセンターなどさまざまな魅力のある街だが、タイアップが不十分だ。

当社がお手伝いして、大船の魅力が十分に発信され、より多くのお客様が大船に立ち寄っていただけるようになれば、「江の島へはモノレールで」という流れが自ずと生まれる。

「村岡新駅」どう考える?

――東海道線村岡新駅設置を含む村岡・深沢エリアの開発には何を望むか。

(村岡・深沢エリアの開発についての詳細は、2019年2月13日付記事「東海道線「村岡新駅」構想、藤沢ー大船間に浮上」を参照)

まず、村岡(藤沢市の国鉄湘南貨物駅跡地 約8.6ha)と深沢(鎌倉市のJR鎌倉総合車両センター跡地など 約31.1ha)の両エリアが大きく発展するには、村岡新駅が必要であろう。

ここからは私が心に思い描いていることにすぎないが、村岡・深沢エリアに、現在工事中の「横浜環状南線(圏央道)」の支線をつないで羽田空港と高速道路で直結させてはどうか。そして、村岡に駐車場とホテルを建設すれば、一大ハブになりうる。車をここに駐めて村岡新駅から東京・横浜や富士山エリアに向けて東海道線に乗り換えることができれば、観光にも非常に便利だ。

さらに村岡新駅と当社の湘南深沢駅をBRT(バス高速輸送システム)などで結び、湘南深沢駅前の交通広場から鎌倉市内各方面へのバスを発着させれば、パークアンドライドとして機能し、鎌倉におけるオーバーツーリズム問題の緩和にもつながる。

なお、以下は筆者による補足だが、村岡新駅は現在、JR東日本によって概略設計が行われているステータスだ。しかしながら駅設置費用を負担することになっている神奈川県、鎌倉市、藤沢市の各自治体の財政状況は厳しい。
また、村岡・深沢の両エリアは建前としては一体開発することになっているが、それぞれ別個に街づくりビジョンが検討されているのが現実である。現在、定期的に開かれている「鎌倉市深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会」を傍聴しても、尾渡氏が示すような広域ビジョンに立つ意見は聞かれない。
2021年には、深沢の都市計画決定が行われることなどから、ここ数年が湘南モノレール沿線の将来の発展を占ううえで重要な時期といえるが、市民の間には開発計画への無関心や、疑問の声も大きい。
森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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