開業50年「湘南モノレール」なぜ住宅街を爆走? 「懸垂式」アピール狙い大阪万博の年に開通

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした中で、全線竣工前の1970年3月7日に大船駅―西鎌倉駅までをとりあえず部分開業させたのには、当面の運賃収入確保のほか、次の理由があった。

開業当時の湘南深沢駅付近(写真:湘南モノレール)

同年3月15日に開幕した日本万国博覧会(大阪万博)では、「会場周辺を巡回する4300メートルの日本跨座型モノレールが活動することになっており、来場者中モノレールに関心のある内外人多数にモノレールは跨座型という強い印象を与えたまま帰すことなく、引き続き“懸垂型は湘南モノレールで”と誘引することは極めて必要」(設営の記録)だった。

つまり、ここでも跨座式と懸垂式の覇権争いが問題になったのだ。

社長に聞く「50年目の湘南モノレール」

さて、湘南モノレールは、2015年5月には経営共創基盤の傘下企業、みちのりホールディングス(HD)へ経営権が引き継がれ、続く同年10月には大手総合商社「双日」出身の尾渡英生氏が社長に就任し、経営・執行体制が一新した。以下、開業50周年にあたっての尾渡氏へのインタビューを掲載する。

――開業50周年には、どのようなことを行う予定か。

今年10月で就任から5年となる湘南モノレールの尾渡英生社長(筆者撮影)

もちろん記念イベントなどは行う。また、幸運なことに江の島が東京五輪のセーリング競技の会場になっており、海外のお客様にも当社を認知していただく絶好の機会となるので、しっかりとPRしていく。一方で5年前の社長就任以来、「企業体質の強化」ということを大きな目標に据え、さまざまな施策を行ってきた。これは当初より10年がかりの仕事と認識しているので、その意味では今年はまだ通過点にすぎない。

――社長就任以後、この5年間での最大の成果は何か。

朝晩の列車本数を増発したダイヤ改正(2016年6月1日)、交通系ICカード「PASMO」の導入(2018年4月1日)、湘南江の島駅のバリアフリー化対応(2018年12月1日)などを通じて、沿線の皆様から「モノレールは、がんばりはじめてるね。応援しよう」と温かい声をいただく機会が増えたのが、何よりも大きい。

PASMO導入直後の運賃収入を見ると、2018年4~6月は前年同期比で定期券が3.2%増、定期外利用が1.4%増だった。定期利用者の伸びが顕著であるのは沿線の方々から一定の評価をいただけるようになった証左と考えている。

また、これに呼応するように社員のマインドも外向きに変化してきているのを感じる。最初の大きな施策であった2016年のダイヤ改正時は、いやいやながら対応した社員が多かったかもしれない。しかし、最近は駅務員や乗務員からも大小さまざまな業務改善提案等が出るようになるなど、皆、積極的に動くようになってきた。

次ページ観光タイアップはまだ不十分
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事