トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義
こうした将来のトヨタを見据えたうえでの長期スパンの投資は、いずれ将来のトヨタに還元されるだろう。CVCの目的の1つである「企業の将来の成長のため」に合致しているといえる。
TRIやTAIVも、トヨタというブランドをもちながら、本社と「程よい距離感」を置くことにより、将来のトヨタないし社会の発展について、効果的に研究を進めていることがよくわかる。TRIが先端研究にフォーカスし、TAIVは最新技術を持つベンチャー企業への投資を通じて業界動向を見極め、そしてトヨタ本体は次世代の研究開発・量産開発をするというよい循環になっている。
CVCは企業の長期戦略の中で重要項目
日本のCVCはさまざまな課題を抱えている。経産省の委託調査資料によると、「ファンドの形態を取っているが親会社がコントロール」する割合が高く、特に日本国内CVCの規模もパフォーマンスも高いとは言えない。
日本のCVCの多くがうまくいっていない原因は、投資目的が不明確、投資先の選定基準が難しいこと、本社決裁に時間がかかる(CVCと本社のコミュニケーションが円滑ではない)こと、ベンチャーキャピタリストのローテーション制度(CVCに出向する社員が2、3年で変わり、ノウハウ・コネなどの引継ぎが難しい)のため適材適所ができていないことと考えられている。国内でも海外でも積極的に投資してかつ成績がよい事例が少ない。
しかし、グローバルな競争環境のもとで自社ですべてのイノベーションを行うのが困難になってきた現在、CVCは企業にとって長期戦略を立てるうえで重要項目になってきている。TAIVはまだ新しいが、日本企業のCVCの好例として今後も注目していく価値を秘めているのではないだろうか。
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