トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義
したがって、普段の業務において重要な意思決定はアメリカンスタイル・シリコンバレースピードで行われる。日本とのやり取りも、木田氏を中心とした日本人出向者のサポートにより、本社との意思疎通も忘れない。
また、TRIはスタンフォード大学に近いロスアルトス、ミシガン大学に近いアナーバー、そしてマサチューセッツ工科大学に近いケンブリッジの3拠点を持っている。大学発新技術との連携、また人材採用を非常に重視しているためだ。
TRIはトヨタの子会社というよりも、自動運転技術の開発競争が激化する中で、アメリカで研究を行い、世界中から人材を集めようとしている。これはTAIVにも影響を与えている。
特にシリコンバレー近辺では、超一流の学生は起業家、一流の学生はGAFAに就職、二流の学生は大企業に就職するともいわれている。
TRIは、インターン等を通して、優秀な人材のリクルートに非常に熱心だ。
したがって、TOYOTAの名前がついていることで日本企業だと思われ、日本(文化)に関心ある人しか集まらないということはなく、「たまたま日系の研究所」「研究内容が面白い」「将来自分の研究成果を実物(TOYOTAのクルマなど)を通して実現できることに大きなやりがいを感じる」と学生から評価されている。
こういった一定の自由度を持ち、かつ現地化した親会社の下にTAIVがある。
TAIVの4つの特徴
TAIVはどういう会社なのか。2017年7月に設立した同社は、「Discover what’s next for Toyota」を目的とするCVCである。規模は2億ドル(1号ファンド1億ドル+2号ファンド1億ドル)。主要な特徴について、伊藤氏へのインタビュー内容から、つぎの4点をまとめた。
同社の主な投資対象は、エンジェル(投資家)ラウンドの次にあるシードラウンド(起業前・事業スタート直前)、シリーズA(事業開始後の初期段階)にある超アーリーステージのスタートアップ。
一般的な日系CVCは、シリーズB(ビジネスモデル確立後の成長期)ないしその以降のステージに投資することが多い。筆者が以前インタビューしたアメリカの投資家が言っていたように、「この日本の大企業が投資するならうちも投資する」という形で日本企業のCVCは後追いが多いとみられている。一方でTAIVは違う。同社はアメリカのVCらしく「種(技術シーズ)」をよく見極めて積極的に投資している。
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