マツダ社長「クルマの売り方を180度変える」 大苦戦のアメリカで、どう巻き返しを図るか
もちろん、これは簡単な話ではない。マツダはアメリカで50年の歴史があり、長年、マツダ車を販売してきたディーラーも多い。そうした販売店からすれば従来とは180度違う売り方になるわけで、転換にはそうとうなエネルギーがいる。リーマンショックのような外的要因があればまだしも、マツダ内部の考え方で販売店のビジネスを変えていくのはかなり難しい。
それゆえ、商品力が上がった2012年以降の車種で販売店に一度成功体験をしてもらって、これであれば一緒に販売改革に取り組めるというステップを踏むことが必要だった。2016年に毛籠(もろ)(勝弘・現専務執行役員)を北米本社トップに据え、不退転の覚悟で改革を進めてもらっている。マツダの考え方に納得してくれて店舗に再投資する販売店は増えており、改革をさらに加速させていく。
売れたからこそ造るという考え方
──生産拠点のなかったアメリカにも2021年に新工場が完成します。その生産能力(年間15万台)を持て余すことはありませんか。
新工場の操業度を上げることは大事だが、だからといって、販売店に押し込んだりはしない。造ったから売るのではなく、売れたから造るという考え方を貫きたい。販売の質をコントロールできる兆しは見えてきたが、それを量でもできるようにするのが今後の仕事だ。
新工場で造る車がアメリカ国内で売り切れない場合は、一部を輸出に回す手もある。販売台数を増やすために禍根を残すくらいなら、造らないほうがいい。それぐらいの覚悟を持って、販売改革をやり切る。
──これまで「マツダプレミアム」という言葉でブランド像を語ってきましたが、消費者には正しく伝わっていないように思います。
「マツダプレミアム」というフレーズを使い始めたのは2代前の山内(孝)社長時代の2010年ぐらいから。顧客との絆を深め、「特別なつながり」を持ったブランドになりたいという思いが込められている。その意図がうまく伝わらず、「プレミアム=高い価格づけ」と誤解された。山内の当時の考え方を変えるつもりはないが、少し補足させてもらうとすれば、顧客だけでなく、一緒にビジネスをしているサプライヤーや販売会社とも、もっと絆を深めたい。
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