群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年

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もっとも行政の対応が不十分かといえば、必ずしもそうではない。外国籍の児童には就学義務はないが、公立の義務教育は希望すれば全員受けることができる。

クラスの約4分の1を外国人の子供が占めるこの地域では、ほかではない取り組みも実施されている。例えば、教師のほかに通訳がつき、不登校児のための学習支援を行い、日系人の子供への日本語教育費用も町が負担している。

外国人児童へ向けたフォロー体制は整っているともいえるだろう。事実、町内で日本人の声を拾っても「行政にできることは限られている」という声が大半だった。その一方では、学力的な問題やいじめといった事情で中学すら卒業できない子供も珍しくない。

そういった学習難民の救済のために、町にはブラジル人学校も点在している。1991年に開校し、現在約120名の生徒が在籍する日伯学園代表を勤める高野祥子さん(75)が言う。

取材に答えた高野祥子さん(筆者撮影)

「小、中学生で不就学になる日系ブラジル人の子供たちに共通しているのは、授業についていけないことで学校を楽しめていないということです。語学上の問題で、自分を落ちこぼれだと思い込む生徒が多い。

学校で通訳はつきますが、通訳の内容事態がわからないこともあり、学校教育の前の家庭教育の時点での言語習得がうまくいってないケースが多いんです。

保護者の大半は工場などでの肉体労働者の方。教育水準の理解も違い、教育に無関心で、学校に通わないことを問題視してない方もいらっしゃる。それほど、日本の学校になじめない子供がたくさんいることも現実です。日本語もポルトガル語も中途半端というのがいちばん問題ですが、そういう子も中にはいます。子供たちの未来を考えるなら、教育の分野での環境整備を進めないと、同じような苦労をする子供は今後も出てくるでしょう」

これは大泉町だけの問題ではない

今後も外国人移住者の所得格差が進んでいくことが予測されるだけに、大泉町が抱える教育、労働、税収といった多角的な問題の本質は根深い。労働力不足で移民が増えることが確実な日本では、これは単なるイチ地方自治体で終わる話ではなく、近い将来全国的な問題として普及していくだろう。

受け入れ体制が進んでいる大泉町ですら、問題は山積みである。だが一方で、試行錯誤を重ねながら共生への道を探り続けた大泉町の存在は、多くの市町村にとってモデルケースとなる可能性を秘めているといえるだろう。

後編に続く

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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