いくらで会社はつくれるの?
やっぱり、起業リスクは大きい
また、会社を創るに当たっての最大の問題は、起業リスクの大きさです。国民生活金融公庫総合研究所のアンケート調査などを見ますと、起業の最大の壁は、「収入の減少」と「失敗時の生活リスクが大きいこと」があげられています。私から言わせると、後者が最大のリスクだと思います。
金融ビッグバンで金融制度が変わっていると言っても、まだまだ融資には個人保証が要求されています。私の友人のベンチャー企業社長も、個人で数億円の借金を抱えている人がいます。会社が倒産すれば、その借金は全て社長にかかってきます(当然、出資だけで融資ゼロでやっている社長もいます)。
現在の破産法では、破産した場合、現金21万円(1月の最低生活費)と衣服・寝具・家具が自由財産(差し押さえできない財産)となっていますが、これで暮らせる人はなかなかいないと思います。米国の連邦破産法では、日本の自由財産以外に、居住用の不動産(日本ではほとんど担保に取られます)、乗用車などが差し押さえ禁止財産となっています。
アメリカがなんでもいいとは思いませんが、こうした制度を見ていると「やはり挑戦の国だなー」と感じます。日本の株式会社は有限責任ではありません。忘れないでください。
昨年にマザーズというベンチャー株式市場に上場した私の友人は、「親から存続した家は担保にいれ、会社が失敗すれば全てを失う」という状況でした。うまく上場できたから良かったですが、もし会社がつぶれでもしたらとんでもないことになっていたと思います。小さな娘さんもいるんですよ!
そして、上場で数十億円のお金を手にしても、正直言って私は、それほど友人がハッピーになったとは思えません(ごめんなさい)。人はそれほど多くのお金を必要としていません。「立って一畳、寝て一畳」といいますが、これは正しいと思います。
独立する覚悟
私も安定した国立大学の先生を辞めて、不安定の極地である政治家になりました。選挙にでると言ったときは、妻のみならず親族の大反対にあいました。みんな言います。「負けたらどうするの?」と。
選挙もやはりリスクが大きすぎます。ただ、政治家になり、小さいながらも自分の事務所を立ち上げてよかったことがあります。それは、自分の志のためにより多くの時間を使え、自分で人に集まってもらい、自分でお金を集め使う、という「ある意味で自由度が大きい」状況にはなっていると思うからです。
リスクは高くなりましたが、自分の最大の資産である「時間」を有効に使えるようになったことは幸いです。あと、毎日必死に頑張らないとこの仕事は続かないというのも、いい意味で緊張があっていいと思っています。
みなさんも、独立というか、やりたいことが今所属されている組織でできないときは、起業もひとつの道として考えられてはいかがでしょうか?ただし、お金のためにやるのは全くお勧めしません。お金を求めて独立しても、人は動いてくれないし、たとえ成功してもむなしいと思います。長い目でみれば幸せにはなれないでしょう!!
藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。
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