「N-BOX」3連覇に透けて見えるホンダの課題 新型フィットでN-BOX依存から脱却できるか

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オデッセイは、室内の広さというミニバン本来の価値を一時期捨て、走行性能をうたう背の低いスタイルになり、ステーションワゴンとの違いをわかりにくくした。

底床化による走行性の高さをうたった3代目「オデッセイ」(写真:ホンダ)

また、ステップワゴンとともにハイブリッド化に遅れたことも、国内ユーザーの選択肢から外れていった理由のひとつだ。さらにCR-Vもアメリカ依存で大型化し、消費者の心から離れていった。

誰もが聞き覚えのあるそうしたホンダの中核車種が、競合を見ながらの開発に陥り、精彩を失ったのである。また、ハイブリッド化など電動化による環境対応に遅れ、運転支援技術でも出遅れが明らかだった。

日本に最適なクルマで世界へ

しかし、ここにきてハイブリッドも方式を絞り込み、電動化を進め始めている。年内には初の市販EV(電気自動車)である「ホンダe」を発売する予定だ。運転支援の「ホンダセンシング」も急速に性能を高め、商品性を上げてきている。

伝統的なホンダの追い上げの強さが、今年は発揮されそうだ。それはまさに、負けが込んだレースを挽回する、モータースポーツ経験を体現するようである。

2020年2月に発売された4代目となる新型「フィット」(写真:ホンダ)

さらに、昨年の第46回東京モーターショーで公開された新型フィットが、いよいよ2月に発売となった。

4代目となるフィットは、原点回帰とでもいうべき小型2ボックス車のよさを見直し、初代から3代目まで超えられなかった弱点を一気に解消する斬新さを備えている。

そこには、「新たな開拓」という精神的な後ろ盾もある。新型フィットは、これまでホンダが永年にわたり取り組んだグローバルカーの考えを転換し、日本に最適なクルマを世界的なグローバルカーの基軸にするという構想で生み出されたのだ。

日本のホンダが、日本に焦点を合わせたクルマで世界に挑むのである。これほど日本人の心を燃え立たせる志はないのではないか。この心意気をもってすれば、軽自動車も登録車も、ホンダに乗ることの喜びを再び高めてくれるのではないかと期待している。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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