新型肺炎、中国「鉄道の現場」はどうなっている? 払戻しきっぷ9000万枚で武漢出入り回避へ

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2月6日までに、鉄道の乗車率のコントロールが始まった。これは、座席数の50%しかきっぷを発売しないようにすることで、旅客が隣り合わずに着席できるようにするものである。また、発熱している旅客が車内で見つかった場合に隔離しやすいよう、列車の後方に空席を残す対応も行われている。北京などの都市鉄道でも、常時ラッシュ時と同じ本数で電車を運転したり、改札制限を行ったりして乗車率を下げる対応がとられている。

全国2000余りの駅において、乗降客全員の体温測定を行っており、発熱している人は乗車を認めなかったり、隔離して検査を受けたりするようになっている。また、列車内でも体温計測を行っており、2月6日までに発熱した旅客502人を途中駅で下車させ、地元衛生当局に引き渡したという。

北京市など、長距離バスの運行を中止した地域がある中で長距離鉄道輸送が継続しているのは、バス停で分散して乗降のあるバスに比べて、鉄道は駅でしか乗降がなく、体温検査などの防疫措置がとりやすいからだとみられる。

濃厚接触者の追跡への協力

2月1日から、全国で、鉄道のきっぷを購入する際に乗客1人ずつの携帯電話番号を登録することが義務づけられた。未成年や高齢者など、携帯電話がない旅客については、家族や知人の番号を登録することとなっている。中国では長距離鉄道は原則として全席指定であり、きっぷは記名制のため、もともと誰がどの列車に乗っていたかを把握できる仕組みになっている。今回、一人一人の連絡先を登録し始めたことで、新型肺炎の患者と列車内で隣り合うなどした濃厚接触者の隔離措置をより迅速に行おうとしている。中国国鉄では、1月21日から2月5日までの間に濃厚接触者の情報を200回以上地方政府に提供したという。

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中国では、都市間鉄道と都市内鉄道が分かれており、都市間鉄道は全席指定制・記名制ということで、緊急時には旅客の流れをコントロール・把握しやすいシステムになっている。このことが、新型肺炎の対応において結果的に有利に働いているといえる。また、鉄道貨物・鉄道荷物輸送のネットワークが確保されていることで、道路輸送が停滞した際の代替ルートとして役割を発揮していることも注目に値するのではないだろうか。

乗客数の大幅減少によって、鉄道は営業面で大きな打撃を受けている。新型肺炎の流行が早く収束し、列車のにぎわいが戻ることを切に願っている。

何 玏 中国鉄道時刻研究会主宰

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か ろく / HE Le

1991年生まれ、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。建設コンサルタント法人に勤務する傍ら、中国の鉄道に関する調査研究に取り組んでいる。編著に『中国鉄道時刻表』(日本語版)、「中国鉄道旅行ガイド」。

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