「ハスラー」と「ジムニー」の似て非なる価値観 ボディや車内、走りにおける相違点とは?

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では、走りはどうか? ハスラーのハイブリッドXターボ 4WDとジムニーを比較すると、結論は予想どおりで、市街地、高速とも走り味はまったく違った。

ラダーフレーム構造の採用がジムニーの最大の特長(写真:スズキ)

本格的なオフロード走破性を前提として、日常使いと高速道路での走行性が先代と比べて大きく進化したジムニーは、路面からの入力や空力による外乱などを、ラダーフレームがジンワリと粘るイメージだ。

泥地や圧雪でも走行可能なガッシリした乗り心地の16インチタイヤが、調和した乗り心地とハンドリングを実現する。走り味全体として、やはり、FR (フロントエンジン・リア駆動車)である。

R06A型ターボエンジンは、4速ATであることも考慮し、オフロードを意識したジンワリとした乗り味のトルクとパワーの味付けだ。

軽4WDでベストバランスのハスラー

一方、ハスラーの走りはダイナミックで、しかもキレがあって心地よい。

初代ハスラーの乗り心地はお世辞にもいいとは言えず、ハンドリングにもキレがなかった。しかし新型は、ボディ剛性の見直しによって、乗り心地とハンドリングは一変した。さらに、4WDによる重量バランスが奏功している。

ハスラーのハイブリッドはISG(モーター機能付発電機)によりモーターが加速をアシストする(筆者撮影)

しかも、エンジンはものすごくトルキーだ。市街地での発進時や高速道路の合流や追い越し時に、グイグイと加速するのだ。

ハイブリッドによる低速での押し出しから、ターボによる加速、さらに新開発のCVTによる伸び感までのつながりが、実にいい。

現在、販売されている軽自動車4WDの中で、最も豪快かつバランスのいい走りをする1台である。

このように、走りについては180度違うジムニーとハスラー。ところが、生活の幅を広げたくなるような、冒険心がそそられるという点では共通だと思った。

ジムニーは、機能美と実用重視の走りを求めたクルマ。新型ハスラーは、竹内秀昭チーフエンジニアが言う「機能感としてのタフさをイメージ」したアクティブな軽クロスオーバー。どちらからも、スズキらしいクルマ作りの精神をしっかり感じ取ることができた。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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