日本株は5GやIT好況だけでは上昇しない なぜ米株に「置いてけぼり」を食らうのか

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そして筆者が最も懸念しているのは消費増税後の国内景気の弱さ、およびそれを投資家が織り込みつつあることである。そこで景気ウォッチャー調査に目を向けると、その弱さが目を引く。

この指標は消費者に近いところでビジネスを展開する人々の景況感を調査するもので、その結果は街角の景気を映し出すばかりでなく、国内総生産(GDP)との連動性も強いため、このシグナルは軽視すべきではい。

2019年10~11月の急落の原因とされた台風19号による下押し圧力は12月には終了したはずだが、それにもかかわらず弱さが続いているのであれば、いよいよ景気の基調的弱さを疑わざるをえない。消費増税から3カ月が経過し、新型肺炎の感染が拡大する前の12月時点で消費増税後の急落をほとんど取り戻せていないことは懸念材料そのものである。

景気ウォッチャーと日米株価には強い連動性

さて、それが株価にどう関係してくるだろうか。ここで景気ウォッチャー調査と日米相対株価(日本株÷アメリカ株)を同じグラフに描くと、驚くほど強い連動性が確認できる。

2018年以降、日本株がアメリカ株対比で後れを取っていたのは、その間の景気ウォッチャー調査(類似指標の消費者態度指数も同様)が趨勢的に低下し、国内景気の肌寒さを映し出してきたことと整合的である。足もとで景気ウォッチャー調査が急低下するなか、それに追随するように日本株が下落しているのは、投資家が内需の弱さを懸念している証拠に思えて仕方がない。

景気ウォッチャー調査と日米相対パフォーマンスの関係は、あくまで日本株の相対感を論じたのであって、水準そのものに直接言及しているわけではないが、街角から聞こえてくる景気の肌寒さが、しっかりと株価に織り込まれていることを認識しておく必要があるだろう。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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