発達障害の「診断名」に振り回される親子の悲劇

その子の興味関心すら「症状化」してしまう

また、診断名が付くことのプラス面は、その子の生きづらさやつまずきが、本人の努力不足のせいでも、親の育て方のせいでもなく、「その子の脳のタイプによるものだから」という理解につながることです。

これまで気になっていた言動や育てにくさについて、ある程度の説明がつくようになれば、子どものことも、親自身のことも、責める必要はなくなります。それはとても大切なことです。

ただ一方で、診断名が付くことによって子どもの言動の捉え方が狭まってしまう、画一的になってしまう心配もあるのです。

数年前にお会いしたお母さんが、わが子の様子をこんなふうに語ってくれました。

「うちの息子は原っぱが好きで、いつも竹の棒を持ってトンボや鳥を棒で追い払うようにしながら、何時間でも走り回っているんです。それに、とても几帳面でミニカーをきちんと並べては、素敵な笑顔を見せるんです。私がそのミニカーをちょっと触って列を乱したりすると、ほんと真剣に怒るんです。それもまたかわいく思っていたんです。でも……」

ある日、子どもの発達について気になるところのあったお母さんが、病院で診てもらったところ、「お母さん、その行動は自閉スペクトラム症の〝こだわり〞ですよ」と告げられたそうなのです。

「その瞬間、今までは『かわいいな、素敵だな、ユニークだな』と感じていた子どもの行動が症状なんだ……と、見る目が変わってしまって。症状だったら『治さないといけない』と。だったら、今後は棒も持たせられないし、ミニカーも……。そんなふうに考えたら、『あの笑顔も症状なの?』って、いろいろと悩むようになってしまいました」

診断名が興味関心を「症状化」させる

「好きでトンボを追いかけて、好きでミニカーを律儀に並べる。それでいいと思いますよ。問題ありませんよ」

そんなふうに僕の意見を伝えると、

「先生、うちの子のこと、トンボが好きで鳥が好きで、走り回ることが好きで、ミニカーが好きで……そういうことが好きな子なんだって思っていてもいいですか?」

と、逆に問い返されました。

「もちろんです!」

僕はそう答えながらも、考え込んでしまいました。医学の診断名というのは、ある意味で、その子の興味関心すらも「症状化」してしまうことがあるのか、と。しかし、診断を受けた側が「症状化」された部分をコントロールしなくてはいけない、と考えてしまうのは、無理もないことかもしれません。

さらに、別のお母さんは、こんな話をしてくれました。

次ページ「診断名のことを学ぼう」という親の本末転倒
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