「Amazonやらせレビュー」中国企業の呆れた手口 高評価や「Amazonのおすすめ」を信じてはダメ

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さらにAmazonの「バリエーション登録」も、こうした出品者は悪用している。Amazon上で既存製品の派生バージョンを登録すると、以前の評価を引き継げるシステムなのだ。たとえば「水筒」や「キーボード」の評価を引き継いで、USBケーブルを高評価に見せかけるといった、とんでもない製品を見つけたこともある。

また品質表示にも問題があり、MFi(Made for iPhone)などの認証を取っていないにもかかわらず、取っているように見えるロゴを画像データに忍ばせたり(システム側はテキストで書かれていないため検出できない)、モバイルバッテリーの表記上の容量と実際に使われているバッテリーセルの容量が大きく異なるといった例もある。
品質に関する責任は出品者にあるため、こうしたスペック詐称問題に関して、Amazonが積極的に関わることはない。

なぜこのような大胆なことができるのかといえば、それはAmazonの流通システムであるFBA(Fulfillment by Amazon)を利用する出品者登録が、極めて簡素であるためだ。加えて、以前ならば出品した製品の最終返品先として日本国内の住所が必要だったが、クロスボーダー取引を促進するために、Amazonは返品先が海外でも問題ないとするようルールを変えた。

このことで、ファブレスどころか「ファブレスのうえに倉庫レス」という、日本での実態がほぼゼロのブランドが、海外からオペレーション可能となった。参入障壁は極めて低く、Amazonに問題視されて登録を取り消されても(よほどのことがない限り、取り消しはない)、簡単に新しい出品者として登録できる。

得られる利益に対し、不正を働くことのリスクが小さく「ズルをしたほうがお得」。一方でマーケティング投資を行い、ブランドを育ててきた国内出品者はブランド価値を失うリスクがあるため、海外出品者のような不正に手を染めることはできない。

「購入したバッテリーで火事」の例も

品質表示に関しては、たとえばイヤホンが「IPX7レベルの防水対応」とあっても、本当にその性能を有しているのか、Amazonは確認していない。仲介をするプラットフォームでしかなく、販売者ではないからだ。

この問題はさらに掘り下げると、深刻な事故にもつながっている。

2017年11月、車のジャンプスターター機能を持つモバイルバッテリーが充電中に発火し、火災が起きるという事件があった。ところが、製造責任を問おうにもメーカーには連絡が取れない。Amazonなどのプラットフォーマーは、セラーに対して機会を提供しているだけであるため、情報提供に協力してもらえないのだ。

実際、上記の例では、購入者が弁護士を通しても、Amazonは販売者の詳しい情報を教えてくれなかったという。

このようなリスクや、Amazon自身のリスクも考えるならば、少なくとも海外出品者の登録審査を強化するなど、“大元を断つ”施策が必要だろう。しかし現在のところ、積極的にAmazon.co.jpが動く気配はない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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