au対ソフトバンク、高額「囲い込み合戦」の異常 改正法の施行後も、携帯の乗り換えに高い壁

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政府は2019年10月に施行した改正電気通信事業法と関連省令によって、携帯通信の契約やスマートフォンの販売手法のルールを大きく改めた。

具体的には、これまでキャリア各社は利用者を2年契約に誘導したうえで途中解約に9500円の違約金を課してきたが、改正法では違約金の上限を1000円にするなどの規制をかけた。

だが、光通信のほうには今も規制をかけていない。そのため、キャリアは改正法の施行後も、光通信には以前から設定していた高額な解約金を課し続けている。そして光通信と携帯通信のセット割引の売り込みに注力することで、携帯通信の実質的な囲い込みを進めている。

前述のようにキャリア各社の携帯通信と光通信のセット割引の効果は非常に大きいため、利用者は光通信が巨額の解約金で囲い込まれていれば、携帯通信だけを他キャリアに乗り換えることは難しい。

auでは実質的な「5年縛り」も

そして、このセット割引の施策に絡んでauとソフトバンクの間では、昨年10月以前の携帯通信の違約金9500円をはるかに上回る金額が動く、激しい客取り合戦が続いている。

まず、光通信では各キャリアとも2年契約ないし3年契約のプランが中心で、途中解約には高額な違約金を課している。

また、光通信の開設の工事費用はキャリアが指定する回数での分割払いが基本となっており、キャリアは毎月の光通信の料金から分割の工事費と同額を割引くキャンペーンを展開することで、工事費用の「実質無料」をうたう。

ここには裏がある。利用者が光通信を途中で解約した場合には、毎月の工事費用を打ち消すキャンペーン割引もなくなり、工事費の残額が丸ごと請求されるのだ。

これらを合算してはじき出される光通信の解約にかかる最大の解約費用は、ドコモが3万1000円(工事費残額1万8000円+違約金1万3000円)、ソフトバンクが3万9000円(工事費残額2万4000円+違約金1万5000円)となる。

auの光通信の解約時の諸費用を計算すると、最大で8万円を超える(記者撮影)

この2社を上回り突出しているのがauだ。auでは戸建て住宅の場合、光通信の解約時に高額の撤去費用も課しているためだ。それも含めると、解約金は最大で8万1300円(工事費残額3万7500円+違約金1万5000円+撤去費用2万8800円)にも上る。

しかもauは戸建て住宅の工事費用の「実質無料」キャンペーンを「工事費用を60カ月の分割払いにし、同額を毎月の光通信料から割り引く」設計にしている。利用者は、例えば契約から24カ月経った後に光通信を解約した場合でも、なお36カ月分の工事費残債を請求されることになるのだ。これはいわば、実質的な「5年縛り」だ。

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