コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる 飛沫感染と「接触感染」をどう避ければいいか

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マスクは、風邪などの予防効果は科学的に立証されていない。しかし、インフルエンザ予防と同様、鼻やのどなど気道を保湿・保温することで、その粘膜を保護し働きを高めることは期待できる。また、自身の手で無意識に口や鼻に触れるのを防ぐことにもなる。

ただし、取り扱いを間違えれば、かえって感染を招く。不織布の使い捨てマスクを、こまめに取り換えながら使うこと。鼻までぴったり覆い、隙間のないように装着する。1枚のマスクを1日以上使い続ける、表裏使う、などはもってのほかだ。不織布部分の外側は、捕えられたウイルスが付着する部分なので、手で触ってはならない。マスクを外す際は、耳にかけたストラップ部分だけをつまんで外し、手で丸めたりせず、そのままゴミ箱に捨ててほしい。

その他、感染の可能性がある人と不要な接触を避けるのは、予防の基本だ。2メートル以内の至近距離での対面会話など、「濃厚接触」はリスクが高い。また、誰もが感染リスクがある状況は、誰しも気づかないまま感染源になりうる状況でもある。咳やくしゃみをひじの内側で受ける「咳エチケット」を社会全体で徹底することが大事だ。

「武漢しばり」にもはや意味なし

ウイルスの判定には現在、遺伝子検査が行われている。条件として現在、体温が37.5℃以上、呼吸器に異常があり、武漢に滞在歴がある(もしくは、滞在歴ある人と接触があった)、などの条件が求められている。条件に当てはまる人は、病院・保健所に連絡をし、指示された医療機関等で遺伝子検査を受けることになる。条件を緩和してしまうと、遺伝子検査の依頼が殺到し、病院や衛生研究所の機能がパンクしてしまう。

ただ、現実的に考えたとき、“武漢しばり”をかけることには、もはや意味はない。理由は上述のとおりだ。となれば、検出されないままに国内で感染が一気に広まるのも、時間の問題だろう。感染力は強いようだが、幸い毒性は高くなさそうだ。国民1人ひとりが、その認識に基づいて行動することのほうが、むしろ大事である。

その大前提となるのが、正しい情報を速やかに入手できることだ。中国政府の情報隠蔽(いんぺい)を疑う声もあり、もし本当ならSARSのときと同様、国際的な非難を受けることは免れない。一方、日本政府もすべての情報を速やかに国民に開示するのかどうか、疑問が残る。風評被害や人々のパニックを懸念し、あるいは個人のプライバシーを盾に、迅速かつ詳細な情報公開をためらう可能性はないだろうか。

例えば、国内ヒト-ヒト3次感染が疑われるバスツアーガイドの女性について、大阪府は当初、その東京-大阪間の交通手段等を明らかにしていなかった(後に、大阪府は行動範囲を公表。ただし立ち寄った場所や受診した医療機関までは不明)。

無駄な水際対策を惰性で続けることよりも、迅速かつ徹底した情報開示を求めたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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