ゴーン会見で日本人が理解できなかったこと やる気満々ゴーンが顔を引き締めたある質問

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会見では意気軒昂でやる気満々だったゴーン氏ですが、表情を引き締めざるを得ない質問が記者から出されました。それは、イスラエル入国問題というものです。

レバノンは隣国のイスラエルとは断交しています。1955年以降、レバノン人のイスラエル入国やイスラエルとの貿易などを禁じています。1948年のイスラエル建国以来、中東戦争やレバノン侵攻などで軍事衝突を繰り返したイスラエルは今でも敵国であり、イスラエル経済に貢献することや、イスラエル人や企業との契約や金銭授受は法律で犯罪と規定されているほどです。

レバノン国民にショックを与えたイスラエル訪問

そんなイスラエルを、ゴーン氏は2008年に訪問しています。当時のペレス大統領やオルメルト首相と会い、笑顔を振りまいている様子がメディアで報じられました。これは2006年にイスラエルがレバノンへ侵攻してから2年後のことでした。この報道は、レバノン国民にショックを与えたのです。

レバノンではこれまで、イスラエルを訪問したアーティストらが逮捕されたことがあります。それなのに、ゴーン氏は2008年の訪問の後も、レバノンの出入国を繰り返しました。それどころか、2017年には当時のハリリ首相の意向でゴーン氏の肖像が入った切手が発行されました。

貧乏人は罰するが、金持ちは罰しない。そのため、「イスラエルと仲のよい人物をレバノンの国民的英雄と持ち上げるのか」と反発を買いました。今回、レバノン人弁護士3人が、戦時下の敵国への入国は関係正常化禁止法という法律に違反しているとし、ゴーン氏を検察に通報しています。

この問題を記者会見で追及されたゴーン氏は、フランスのパスポートで入国してイスラエルに行き、同国企業と電気自動車に関する契約を結んだことを認めました。「ルノーの社命であり、仕方がなかった」と謝罪し、イスラエル訪問について理解を求めています。会見の翌日に、ゴーン氏はレバノン検察の取り調べを受け、この問題についての時効を主張しました。そのため、時効が成立するかしないのか、有罪となれば服役するかどうかが注目されています。

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