日高屋「おいしくて安い」の先にある店舗戦略 稼ぎ頭は520円の「野菜たっぷりタンメン」
先述のように、日高屋のメイン客層はサラリーマン。とは言っても、ファン層の年齢上昇とともに、徐々に上の世代に推移しており、60~70代も増えてきているそうだ。加えて、働き方改革の影響により、飲み会需要も減少している。
2019年12月26日に発表された2020年2月期第3四半期決算短信によると、当該期間における売上高は314億2100万円で前年同期比0.1%の増、営業利益は30億6500万円(前年同期比16.3%の減)となっている。
「日高屋は中華料理屋とラーメン屋を一体化したようなサービスで、1杯飲めてかつファミリーにも対応できる店。夜8時以降、また深夜帯の売り上げが確保できるというビジネスモデルでしたが、今はもう、終電がなくなって朝まで飲む、というような人はかなり減りました」(青野氏)
メニュー数の多さという効率ダウン要因に対し、高回転率、長時間営業で収益率を高めてきたわけだが、そのモデルが成り立たなくなってきているということだ。現在では、1駅に複数店舗がある一部既存店や新規出店店舗では営業時間を一部短縮しているという。
また、ドミナント出店にも副作用がある。当然のことだが、同じ条件のよい立地に複数店舗が存在すると、やはり客の奪い合いが生じてしまうのだ。また、いずれの業界においてもいえることであるが、低コスト競争に巻き込まれるとゴールのない苦しい戦いを強いられてしまう。
現に、都内では新しい中華料理チェーン「中華食堂一番館」の台頭も報じられている。つい先日の1月6日には、日高屋と並び割安のチェーンとして知られる幸楽苑が51店閉店を発表した。
業態の異なる店舗で「食い合い」を避ける
そこで同社が次にもくろんでいるのが複数業態の展開だ。例えば駅前の好立地が隣り合わせで2軒押さえられたとしたら、業態の異なる店舗を出すことで、食い合いを避けることができる。
12月17日には、大宮にちゃんぽん専門店の「ちゃんぽん 菜ノ宮」をオープン。店名は野菜の「菜」と大宮の語源「大いなる宮居」である氷川神社からとった「宮」とのことで、野菜や魚介などの具材をたっぷり使っているのが特徴。
また、夜のアルコール需要にも対応してつまみのメニューもそろえており、「さいのみや(飲みや)」ともとれるようなネーミングとしている。
首都圏のちゃんぽんチェーンとしてはリンガーハットが強豪だが、ハイデイ日高の新ちゃんぽんチェーンである菜ノ宮は、こだわりのスープで、リンガーハットとまったく違う味を目指したという。
「指定原料の鶏」を使用し、2トン釜で煮込んだスープを新たに開発。なおこの指定原料とは具体的には、丸鶏を使うといったように、素材にこだわっている意味だそうだ。
実はこのスープは、同社の起死回生、というと大げさだが、今後の展開の重要ポイントとなってくるアイテムのようだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら