習政権が工場爆破令、豪腕に地方政府が震撼 過剰投資を抑え安定成長への転換を狙う中国

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すでに出そろった地方政府の14年の成長率目標を見ると、約7割が前年の目標水準から引き下げている。地方のGDPには一部、水増しもあるといわれるが、「これだけの数の地方が目標数値を前年より引き下げたのは、前代未聞」(北京の国際金融筋)。

経済成長の結果で地方指導者の実績を評価してきたことが過剰投資の元凶であったことは、以前から指摘されてきた。それにようやく歯止めがかかってきた格好だ。

一方、過剰投資の裏側には、過剰な債務もある。昨年12月、13年6月末時点での地方政府債務の総額が17.9兆元(1元は約17円)と発表された。国と地方の直接・間接の債務合計は30.3兆元で、12年末GDPの約6割に相当する。

ここ数年の債務増加の主役になったのが、地方政府の資金調達機関である融資平台だ。融資平台が銀行融資や債券発行で資金を調達することで、大規模なインフラ投資や不動産開発を可能にしてきた。だが、非効率な投資にカネが流れ続けると、不良債権の量産に直結しかねない。金融機関を介さない「影の銀行」といわれる取引の拡大を抑えることも課題だ。

刺激策への期待を牽制

河北省で爆音が響いたのと同じ週末。オーストラリアのシドニーで開催されたG20(主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)では、中国の製造業購買担当者指数(PMI)が7カ月ぶりの低水準になったことが話題になり、楼継偉財政相が「中国ではGDPに占める製造業のシェアは6割を超えていたが、13年にはサービス業が上回った」と説明。そのうえで、「13年も中国は世界の経済成長の30%近くを支えており、自国の経済規模を超えた貢献をしてきた」と言明した。

また、会議に同行した中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁も、「中国には7~8%の成長がふさわしい」として、中国に景気刺激を求める議論を牽制している。リーマンショック後の「4兆元投資」の結果、成長の原動力を投資に依存する度合いが高まったことへの反省は深い。

3月5日から開く全国人民代表大会(全人代)では、今年の経済成長率の目標値が定められる。昨年と同じ7.5%になるとの予測が大勢だが、構造改革を優先する姿勢を示すため、7.0%に落とすという見方も根強い。

昨年秋の共産党中央委員会全体会議(三中全会)で、行政や金融、対外開放など、改革メニューは出そろった。過剰投資の負の遺産を処理しつつ、いかに安定的な成長を維持できるか。その成否は、全人代で示されるはずの具体策に懸かっている。

週刊東洋経済2014年3月8日号〈3月3日発売〉 核心リポート04より図版などを削除し一部掲載)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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