仕事道具を減らすと、集中力がみなぎる 【特別対談】土橋正×本田直之(下)
本田 うーん、正直なことを言うと、今はスケジュール全体を俯瞰することが必要とされる仕事とかプロジェクトというのが、あまりないんですよね。言葉を変えて言えば、自分で計画を立てて進めていく仕事がほとんどない。
数年前からですけど、仕事でもプライベートでも移動することがさらに増えて、その移動の中で仕事をしていく必要が出てきた。そうした大きな流れの中で、その場その場で決めていく、といったことが求められるようになってきているのです。もっと言ってしまえば、流れに任せることで、計画を立てる意味がなくなってきたという気がしていますね。
土橋 それはどういうこと?
仕事のスタイルによって、最適な仕事道具は変わる
本田 計画を立てて、それをきっちりと一つひとつこなしていくより、計画にはなかったけれど、もっと面白そうなことがあれば、柔軟にそれを選択していくという。やっぱり、事前に想定していたことより、実際に現地へ行ってからわかることって多いじゃないですか。そこで面白そうなものがあれば、そっちに向かって行く。これは、自分の経験からもはっきりしていることです。物事をあらかじめ決めすぎるよりも、そういう流れに乗ることのほうが大切な時代になってきている気がするのです。
土橋 なるほど、ある程度は決めるけど、あとは流れに任せるというのは興味深いね。いずれにしても、俯瞰が必要な計画はほとんど立てないんだね。
本田 そうですね、仕事についてはそんな感じですね。全体を俯瞰する必要があるのは、今の自分では、トレーニングの計画くらいかな(笑)。アイアンマンレースに出る前のトレーニングは、レース当日までのスケジュールを、紙の計画表で作ってます。
土橋 そうかぁ……、仕事の内容が変わってきて、仕事のスタイルも変わってきている。それとともに、仕事道具も変わってきていると。
本田 そうですね。仕事でもプライベートでも、移動の中で仕事をしていく必要がある。そういう仕事のスタイルでは、iPhoneやiPadが最適なんですよ。今、アプリはどんどん進化していて、便利なものが数多く出ています。その中でも、今の僕にとって、Evernoteとともに、ないと困るのがTripit(トリップイット)。
土橋 どんなアプリ?
本田 まずスゴイのが、航空会社からのメールやホテルの予約メールを自動的に取り込んで、スケジュールと連動してくれること。空港からホテルまで、どれくらいの時間がかかるか、わかるのも便利。
しかも、天候などの理由で、出発の時間が遅れたりすると、フライト時間の変更や搭乗ゲートの変更などをプッシュ通知で知らせてくれるのです。さらに、乗り継ぎなどを変更しなければならない場合は、目的地に行くのに必要な代替便の情報が表示され、その情報をタップしていくと、その便を提供している航空会社のサイトにつながって予約までできる。