J:COMが徹底的な「地域密着」で得た独自の地位 ラストワンマイルを握る者ならではの強み

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89年にアナログ衛星放送の本放送がスタートした際、視聴するには別途専用チューナーとパラボラアンテナを購入する必要があったが、ケーブルテレビは一括受信→再送信というサービスを実現することで、「アンテナとチューナーなしでBS放送が見られる」というメリットを押し出して加入者を増やし(CS放送においても同様)、都市型多チャンネルサービスの普及を促進させた実績がある。

さらに家庭用インターネットサービスにおいても、NTTがアナログ電話回線による従量制を主流としていたころ、同軸ケーブルの広帯域とケーブルモデムの使用によって、高速で定額制の常時接続サービスを実現し、ブロードバンド普及の先駆けとなったことも、見逃せない。その後のデジタル放送対応、現在の4K放送への積極展開も、そうした歴史の上にある。

OTTとは競合ではなく共存を目指す

ケーブルテレビは、サブスクリプション(定額制)方式のコンテンツビジネスにおける走りとも言え、しかも当該サービスエリアでは同業との競合も基本的にないため、新規加入数と解約数のバランスが取れてさえいれば、安定的な経営が行えるとされてきた。しかし「ひかりTV」など光ファイバー業者によるコンテンツ提供が始まると、トリプルプレイサービスの優位性は徐々に薄れ、さらに近年、ネット動画配信ビジネスであるOTT(オーバー・ザ・トップ)の登場により、ユーザーの“お財布”をめぐる競争がいっそう激化するだろうと予想される。

しかし、J:COMが19年12月に提供開始した新STB(セットトップボックス)「J:COM LINK」は、NetflixやDAZN、TVerなどのネット動画をテレビで気軽に楽しめる機能を搭載している。

「従来の多チャンネルとOTTは競合関係にあると言えますが、ネット動画を大画面のテレビで見たいというお客様のニーズは確実にありますし、当社のインターネットサービスへの加入促進にもつながるので、アライアンスによって共存していけると考えています」(高橋氏)

ネット動画をテレビで見るには、対応するスマートテレビやAmazon Fire TV Stick、Google Chromecastといったデバイスでも実現できるが、自前でデバイスを導入せずとも、今あるテレビを“最新のスマートテレビ”に移行できるSTBを提供したほうが、顧客満足に直結するというわけだ。

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