プロ野球選手集結するチャリティ実現の舞台裏 球団の垣根を越えたどんなイベントなのか

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夢の奨学金は、児童養護施設や里親家庭など、社会的養護のもとで育った子どもたちが18歳を過ぎても自立できるように支援する完全給付型の奨学金であり、学費だけでなく生活費にも活用できる。

和田と千賀のトークショーの様子(写真:筆者提供)

和田は「多くの学生が返済で苦労する中、給付型であれば賛同したい」と共感し、自身も奨学金で大学進学しプロ野球選手になる夢をかなえたことから、この支援先に決定した。ちなみに、則本も奨学金のサポートで大学進学を果たしている。

第1回では、千賀が2019シーズンから1奪三振につき1万円を積み立てし、NPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」が実施する「オレンジリボン運動」に寄付することを発表(この活動をBLFがサポート)。

すると、則本が「僕も前から何かやりたかった。千賀がやるならすぐにやらなあかん。何か始めます!」とイベント中に支援活動のスタートを約束し、同じくBLFサポートのもと、2019年オフから公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」を通じ、主に東北の子どもの学習支援を行うことを2019年11月に発表した。

吉田も、千賀の発表やイベントの趣旨から刺激を受け、翌日には支援活動を志願。こちらもBLFのサポートにより、2019シーズンからホームラン1本につき10万円をNPO法人「国境なき子どもたち」に寄付し、開発途上国の子どもの支援を行うことになった。

驚くべきは、千賀は自己最多の227奪三振でタイトル獲得、吉田は先述のとおり29本塁打と、支援活動を始めたシーズンに2人そろってキャリアハイを達成したことである。2人とも、「こういう取り組みをしていて数字がついてこないと寂しいから」(千賀)、「1打席も無駄にできないと思った」(吉田)と、支援活動が競技への新たなモチベーションになったことを語っている。

和田毅と奨学生、思いがけない16年ぶりの再会

第2回となった今年も同じ6人が集まり、トークショー、フォトセッション、ウェブ配信を行った。イベントのオープニングでは、一度諦めた進学を夢の奨学金によって果たすことができたという奨学生の宇野涼太さんが登壇。和田から昨年のイベントで集まった寄付金「666,851円」のパネルが贈呈された。

『野球で、人を救おう』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。オンライン寄付ページもあります

偶然にも、宇野さんは和田がルーキーのときに訪問した児童養護施設で育っており、思いがけない16年ぶりの再会となった。

今回は、チケット代とフォトセッションのみですでに66万4641円の寄付が集まっている。

オンラインでの寄付は1月31日まで受け付けているため、第1回の寄付金額を間違いなく超えるだろう。

SNS上では「選手の楽しい話が聞けて、ふれあいもできて、社会にいいことができる神イベント」とつぶかれているようで、主催者としてこんなにうれしいことはない。

(文中敬称略)

岡田 真理 ライター

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おかだ まり / Mari Okada

1978年静岡県生まれ、立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネジャーを経て2007年よりフリーランスライターとして活動。『週刊ベースボール』『がっつり!プロ野球』『スポーツナビ』などで執筆するほか、『谷繁流キャッチャー思考』(日本文芸社)『北島康介トレーニング・クロニクル』(ベースボール・マガジン社)などの書籍で構成を担当。2014年に野球を通じてチャリティーなどの社会貢献活動を行うNPO法人「ベースボール・レジェンド・ファウンデーション」を設立。「プロ野球静岡県人会」の事務局長、および侍ジャパンU12監督・仁志敏久氏が主宰する野球振興プロジェクト「ホームベースクラブ」の運営も行っている。

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