トヨタ「ヨタハチ」が今も語られる名車の理由 「スポーツ800」は速くないが勝つ強さがあった
「トヨタ・スポーツ800」、、僕の心の中では日本の産んだ名車として位置づけられている。
「国民車」として生まれたパブリカをベースにしているだけに、パワースペック的には情けないくらいひ弱だ。
パブリカ・ベースの790cc・空冷フラットツインは、45ps / 6.8kgmを引き出すに過ぎなかったし、パタパタ、、ッといった音も、お世辞にも刺激的とは言えなかった。
同時期には一世を風靡したホンダS600 があった。606ccながら、4キャブを組み込んだDOHC 4気筒エンジンは、楽に9000rpmまで回り、57ps/5.2kgmを引き出していた。
両車が戦えば、誰でもS600が断然優位との答えを出すだろうし、実際にも、スプリント戦ではホンダが圧倒的に強かった。
長距離レースで強みを発揮
ところが、長距離レースでは立ち場が逆転。非力ながら、軽量で、空気抵抗が小さく、旋回速度も速い、、そして、なにより燃費の良さでライバルを突き放してしまう。
今もよく覚えているのは1966年の第1回鈴鹿500km。ホンダS600は元より、ずっと格上のロータス・エラン、スカイラインGT、フェアレディ等々の給油ピットインをよそ目に、一度も給油することなく優勝してしまった。
その時の燃費は9km/ℓだったとされるが、レーシング領域での9km/ℓはすごい!
ちなみに、僕のドライブでの燃費は、日常領域で18km/ℓ、伊豆半島を1周した長距離クルージングでは28km/ℓをマークしている。
驚くべきというか、恐るべきというか、、まさに、そんな表現が相応しい燃費だ。
トヨタ・スポーツ800の開発を主導したのは長谷川龍雄主査。日本のモータリゼーションを牽引する大きな役割を担った初代カローラの開発主査として知られる方だ。
元々は航空技術者で、戦後トヨタに入社。ゆえに、軽量化、空気抵抗抑制等への拘りは強かったと想像できるが、トヨタ・スポーツ800は、そんな背景を容易に納得させた。