アメリカの株価は大きく調整する可能性がある 長期は上昇でも目先は期待を織り込みすぎだ

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2020年に合意案の署名がなされれば、株式市場はそれを好感したと唱えて、また買い上がる局面がありうる。ただし、今回の部分合意はそうした中身のないものであるし、今回を第1弾としても、より両国間の意見が異なる構造問題(中国政府による自国産業への補助金など)が先に横たわっているため、「第2弾」以降はないだろう。つまり、先行きのアメリカの株式市場は、追加の好材料の「燃料」を欠くことになる。

本当に「金余り」なのか?

以前から「アメリカ株は金融相場なので上昇が続く」との声はよく聞かれた。連銀による3度の利下げが行なわれた際は、そうした説はある程度の説得力を持っていたかもしれない。だが、今月のFOMC(連邦公開市場委員会)では利下げが実施されなかったうえ、2020年については「(利上げも実施されないが)利下げは行われない」との見込みが示された。ところがアメリカの株式市場では「利上げがないから買ってよい」との口実が聞こえるばかりで、「利下げがなくなったので、もう金融相場は終わった」という見解はないようだ。

それどころか一部では、「グレートローテーション」(債券金利が低いことにより、債券市場から株式市場に大いに資金が流入すること)という言葉まで唱えられ、一段と金融相場をもてはやすような状況だ。ところが予想PER(株価収益率)などでみてアメリカの株価は既に割高さを強めており、債券市場のなかでも国債利回りの低さから、ジャンク債(低格付け債)の価格は国債に対し相対的に買い上げられてしまっている。つまり、これから低金利が、株式やジャンク債などのリスクの高い資産の価格を押し上げていくというより、すでに価格は押し上がり切ってしまっていると解釈すべきなのではないだろうか。

市場には「いや、金利の低さではなく、金余りなのだ。現に今、連銀は資金供給を行なっている。それは「隠れQE4」(QE=量的金融緩和を指す)とも呼ぶべきものだ。その余った資金がこれからアメリカの株式市況を押し上げる」、との声もあるようだ。

その論拠として、連銀のバランスシートが膨らみ始めたことがよく指摘されている。連銀が債券を買い取って現金を市中に撒き、その債券を保有資産に積めば、バランスシートが膨らむからだ。

しかし重要なのは、どの程度資金を撒いたかではなく、その結果市中が金余りになっているかどうかだろう。そこで中央銀行による資金散布が「結果として」どの程度になっているかを示す、マネタリーベースという資金統計をみると、その前年比は、QE1ではピークで100%超(資金量が2倍超)、QE2では35%弱、QE3では40%弱であった。

これに対して、直近の今年11月のデータをみると、前年比4.6%「減」だ。最近までの量的緩和縮小の過程では、前年比は一時マイナス13%に達したので、それに比べれば連銀の散布資金の減り方は緩くなったと言えるが、マネタリーベースが減少する金余りとは、聞いたことがない。季節調整後のマネタリーベースの実額をみても、ごく最近では今年3月に3.41兆ドルで短期的なピークをつけ、9月には3.21兆ドルまで減少した後、やや増加してはいるが、それでも11月時点で3.33兆ドルの水準だ。

次ページ「世界経済は2020年末には回復」には同意するが・・・
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