アメリカの株価は大きく調整する可能性がある 長期は上昇でも目先は期待を織り込みすぎだ

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足元の株価強気相場の理由として挙げられているものとしては、先行きの景気や企業収益の回復期待もあるだろう。確かにアメリカの企業収益見通しについては、S&P500指数採用銘柄のEPS(1株当たり利益)予想値(ファクトセット集計による2020年年間のアナリスト予想)をみると、収益水準はまだ低位だが、前年比での下方修正が止まってきた感はある。

また、2020年第4四半期にはアメリカ企業の収益の増益色が強まるだろう、との見解も有力だ。その点は筆者も全く違和感はなく、そうした増益を受けて、2020年後半から2021年以降にかけては、アメリカの株価は長期上昇基調に復すると予想している。

しかしそうした期待を目いっぱいに織り込んでいるからこそ、足元の予想PERが割高になっていると言えるだろう。収益の増加基調に支えられた本格的な株価上昇が2020年後半に生じる前に、一度アメリカの株価は大きく調整するのではないだろうか。

年内の相場はあまり動かない?

一方、肝心の日本企業の収益動向については、同様にファクトセット集計のアナリスト予想で、EPS前年比をみると、2020年暦年(3月決算企業の場合は、2020年3月期の収益予想値の3カ月分と、2021年3月期の予想値の9カ月分をとって、合算)では、直近3週間とも前年比10.2%の大幅減益が見込まれており、しかも上方修正の兆しは見えない。

なお、2020年前半にかけては、種々述べたような背景により、世界的な株価の大幅調整(日本株も含めて)を引き続き予想するが、2019年内に限れば、特に大きな材料はないため、株価はほぼ横ばいで推移し、大きな動きが起きるのは2020年以降のこととなろう。アメリカの株式市場も、クリスマスの休場をはさみ、動意が乏しくなりそうだ。海外投資家も大きくは動くまい。今週の日経平均株価は、2万3500円~2万4000円を予想する。

最後に余談めいた話をさせていただきたい。筆者は自分ではわからないが、かなりはっきりモノを言ったり書いたりする、という印象があるようだ。株価見通しで、株価は上がるかもしれないし下がるかもしれないし横ばいの可能性もある、と言ったところで何の参考にもならないので、論拠と論旨を明確に述べて、市場見通しを提示しているからなのかもしれない。また、肩の凝らない面白い話にしようとして、用語や言い回しを選ぶ結果、人によってはキツイことを言っていると感じられる点もあるように思う。

ただ、他者(他の専門家や投資家など)を、非難する意図は全くない。今回も当コラムの前半で、「米中部分合意期待」「金余り期待」「景気回復期待」などによる株価上昇予想について、否定的な見解を述べたが、それは筆者がそうした見解に同意しないと言っているだけで、それらの見解を主張する方を非難しているわけではない。さまざまな意見があってよいと思うし、それはすべて尊重したい。

また、筆者は「今年は日経平均が1万6000円に下落する」との予想を年初に打ち出し、数字が独り歩きした感が強かったし、「極端な数字を言って目立とうとしている」などのご批判もいただいた。

決して悲観的なことをわざと打ち出して投資家を驚かせようと考えたわけではない。以前も当コラムで述べたが、長期的にじっくりと現物の個別銘柄やファンドを保有して、長い目で株式投資を継続していただきたいと考えている。1万6000円を予想した際の意図は、「そのように大きく株価が下落する恐れがあるが、下落してからあわてて株式を売却するのではなく、既に想定内のことだと落ち着いて、株式投資を継続してください」ということ以上のものではない。

このように、まだまだ至らない筆者ではありますが、今年も当コラムでお付き合いを賜り、誠にありがとうございました。2020年もどうぞよろしくお願いいたします。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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