イスラム教のムハンマドを経営者に例えてみた 意外と知らないイスラムの歴史を大胆解説

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メディーナ社は社長ムハンマドのカリスマ性や個人的に培った信用によって成り立っていたので、このニュースに社の人間のみならずアラビア半島の人々全員が衝撃を受けました。

株価は急落して財務状況が急激に悪化します。本社経営陣は、まずは社員の動揺を抑えて通常業務に戻させ、財務を健全化させて経営を安定させるため、故ムハンマド社長を「永久社長」としたうえで、新たに「社長代理(カリフ)」というポストを作り、メッカ社時代から社長を支えた常務取締役アブー・バクルを社長代理に就任させました。

しかし、故ムハンマド社長への個人的な信頼感から傘下に加わっていた企業が次々とメディーナ社から離反して資本独立を図りました。

社長代理アブー・バクルは断固としてこれら「裏切り者」と戦い、会社の分裂を防ぎました。

そして、第2代社長代理となったウマルは、さらに大きな収益を確保しないと社員数が増えた会社が倒産してしまうと考え、ペルシャ社とビザンツ社という超巨大企業との戦いを決意します。メディーナ社とグループ会社の社員たちは一丸となり、休日出勤もいとわず薄給で死ぬ気で働き、とうとうペルシャ社を潰して併合することに成功します。また、ビザンツ社のシェアも半分以上奪いとることに成功しました。

この結果、メディーナ社にはこれまで見たことのないような多額のキャッシュが入ってくるようになったのです。

中興の祖、ウマルの活躍とウスマーンの失策

ウマル社長代理は、これまでの社員の苦労に報いようと、とくに長年社に貢献した者に多額のボーナスを与えました。すると、その話を聞きつけた他社の社員がボーナスを目当てに次々と転職してくるようになったのです。

古参社員も新入社員もバリバリ働き、どんどん売り上げをあげているうちはまだよかったのですが、第3代社長代理のウスマーンの時代に売り上げが停滞するようになります。

もともと創業者ムハンマドが掲げたメディーナ社のモットーは「質実剛健」で、「すべての社員が平等」が合言葉でした。しかし、社員に高給を与えるのが当然になると、売り上げが少なくても古参社員は高額なボーナスや給与を独占し、新しくやってきた社員は安くこき使われるような不平等が生じます。当然、新しい社員は「話が違う」と不満を募らせることになりました。

ウスマーン社長代理は、社の創業物語である「コーラン」をまとめて創業者ムハンマドの志を社員に植え付けようとしました。というのも海外支社が急拡大したため、創業時代を知る有能な古参社員がダマスクスやカイロ、クーファなどの支社経営のために出向してしまい、本社は創業時を知らない新しい社員しかいなくなってしまったからでした。

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