トランプが弾劾裁判で「有罪」招きかねない要素 共和党が過半数握る上院は安泰のはずだが

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「有罪判決の可能性を最も高める不確定要素は、トランプ自身の自己管理能力の不足だ」と、法務研究所のデイビット・プリエス氏もアメリカの政治ニュースをリードするポリティコのインタビューにこう答えている。

トランプ大統領の精神状態は実際、悪化しているように見える。ミシガン州での2時間に及ぶとりとめのない演説のほかにも、大統領はこの数日間で数百の弾劾を非難するツイートをしている。投票が行われた日、トランプ大統領は50回ツイートを投稿し、その中には政治家やそのほかの人々への個人的な中傷も含まれていた。メキシコ、およびカナダとの新たな貿易協定の承認のための投票のような政治的勝利でさえも、この執着を減らすことには役立たない。

弾劾訴追されなければもっと悪いことに

裁判がどんな結果になろうとも、トランプ大統領への弾劾が、アメリカ合衆国憲法下において認められている最も深刻な非難という形で歴史に残るだろう、という見解を多くの歴史家が共有している。

ウクライナ問題だけでなくロシアについての捜査でも、正義に反する企ての証拠が提出されている状況では、こうした歴史家たちにとって、トランプを非難する以外に残された選択は少ない。

「議会にはトランプ大統領を弾劾する義務がある」と、ブラウン大学憲法学教授のコーリー・ブレットシュナイダー氏はポリティコに語っている。「これは政治の党派性を超えた決断だ。行動を起こさなければ議会の憲法上の義務を蔑ろにし、無法な大統領をさらに後押しすることになっただろう」。審議がなされなければ、トランプ大統領はウクライナ大統領が公的なやり方でバイデン元副大統領を追求するよう強要し続けただろうと同氏は主張する。

複数の学者によると、たとえ弾劾が民主党にとって政治的なリスクであっても、将来の大統領が自身を、法を超える存在だと思わないようにするために、行動を起こす必要があったとしている。

「弾劾は民主党が立場を明確にするための方法だった」とミシガン大学法学部のリア・リトマン教授は言う。「そうしなければ、現大統領や将来の大統領がさらにひどいことをしないよう止めることができなくなってしまっていただろう」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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