無意味に子どもの短所を指摘する親たちの「罪」 ダメさを言い続けることのメリットはない

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このように長所を言うことに意味はあっても、短所の指摘にメリットはありません。しかし、親子の関係などになると、親はつい短所ばかりを言い募ってしまいます。いつかは親が諦めるという形で短所の指摘には終止符が打たれるのですが、それまでに親子の仲に深い溝ができてしまうことも少なくありません。

「YES~BUT」ではなく、長所だけを言う

次に、金子さんのお子さんにどのような声かけをしたらよいか、その方法についてお話しします。

【最も効果がない声かけ】
「算数ができないのだからもっとやりなさい」

【一見、効果がありそうで効果がない声かけ】
「国語はよくできるね、でも算数ができないのだから算数も頑張るように」

この方法は初めによい部分をほめてから、後で直すべき部分を指摘するという「YES〜BUT」の構造です。人に指摘するときは、このような言い方をするのがよいと推奨されることもあります。しかし、筆者はこの伝え方を推奨していません。なぜなら、受け手の子どもには「できない算数をやれ」というメッセージしか伝わらないからなのです。

例えば、金子さんがご主人から「今日のおかずはおいしかったけど、味噌汁はイマイチだね」と言われたら、どの部分が強烈に心に残るでしょうか。味噌汁がイマイチであることは自分で飲んでみればわかることで、それをいちいち指摘されたら二度と作りたくないと思うことでしょう。では、どのような声かけがよいかといえば、それが次の声かけです。

【もっとも効果的な声かけ】
「国語よくできるね」

たった、これだけです。これが長所を伸ばし短所を指摘しないということなのです。苦手な算数をできるようにしていく方法はあるのですが、それは教育者がやることであり、親がそれをやっても望むような効果は期待できません。

ですので短所の指摘はせず、長所だけを言うようにします。すると、子どもは自信を持ちはじめ、自己肯定感が上がり、その結果、自分で自覚している短所にも前向きに、後から自己修正し始める可能性が高まるということなのです。

この方法はこれまで数々の成功例がありますので、まずは一度試してみてください。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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