日本人の給料がまったく増えない悩ましい事情 雇用形態や人事評価で不利、中小企業も苦しい

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日本人の給与が上がらない理由はほかにもある。拙著『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』でも詳しく論じているが、ここでは3つ挙げよう。

理由①終身雇用を中心とした、「下方硬直化を前提とした上方硬直化」

終身雇用で社員を雇用する企業は、社員の給与を上げることはできなくもないが、下げるのは難しいと判断する。これが硬直化だ。なかなか動かないこと。下げられないから、そもそも給与は上げられない状況を指す。

例えばある社員が、今月30万円相当の仕事をしたとする。しかし翌月には20万円分の仕事しかしなかった。でも翌々月には40万円相当の仕事をしたとする。こんなときに企業はなかなか、給与を30万円→20万円→40万円とは変更できない。給与30万円を払い続けるのが最もいい。

日ごろの生活では、100円の商品なら100円、1000円の商品なら1000円をスーパーに払う。しかし、雇用の場合は、100円の価値しかない月も、1000円をもらうことができる。

反感を買うぐらいなら低めに抑えたほうがいい?

経営者にとってみれば、成果に応じた給与を払いたい。でも給与を下げると、社員から反感を買う可能性がある。それならもともと低めに設定して、そこから変化させないほうがいいと経営者が考えるのは当然だ。状況に応じて解雇できる国と違って、日本はこれが許されない。そうなると給与が上がりにくいのはしかたがない。

繰り返し、終身雇用を前提としているのだ。

なお、勘違いする読者も多いが、海外の企業であっても大半は、企業の勤務年数に応じて給与は上がる傾向にある。日本と同じくゆるやかに、年数を経るごとに給与は上昇する。

ただ、問題なのは流動性への意識だ。成績が出なかったら辞めさせられる、よかったら残ってもらう。そう考えるのが当然の海外の企業と、とにかく雇用し続ける日本企業。どちらが、給与を上げやすいかは明確だろう。

理由②人事評価の不徹底

誰かがすごく優秀だったとする。その人が働くことで、1億円の売り上げが加算されるのであれば、その人の給与を上げてもいいはずだ。それによって利益が5000万円アップするのであればその分をその人に回してもいい。

ただ、難しいのが、「ほんとうにそれはその人の成果か?」ということだ。もしかしたら、アドバイスをした先輩のおかげかもしれない、上司のおかげかもしれない、時流のせいかもしれない、自社のアシスタントが頑張ってくれたおかげかもしれない、あるいはたまたまかもしれない。

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