ベンツ「4代目Aクラス」発売1年後の通信簿 デジタル世代のベンツは受け入れられたのか

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安全運転支援システムの充実も、注目点の1つ。衝突被害軽減自動ブレーキを含む先進運転支援システムは、メルセデス・ベンツのフラッグシップとなる「Sクラス」と同等。高速道路での走行レーン維持のステアリング・アシストだけでなく、レーンチェンジもアシストしてくれる。自動運転レベルでいえばレベル2に相当する機能が備わっている。

Aクラスはエントリーという存在ながらも、MBUX導入というブランドの一大事の先陣を切るという重要な役割も与えられたモデルでもあったのだ。

販売台数は旧モデルの3倍以上

そんなAクラスの実際の販売状況は、どのようなものであったのだろうか。その数字をメルセデス・ベンツ日本に尋ねてみると、「新型Aクラスの登録が始まったのが、2018年12月からとなりますので、2018年12月~2019年10月で約1万2000台(セダン含む)となります。2018年の旧型Aクラスと比較すると3倍以上となります」と言う。

ちなみに、同時期のメルセデス・ベンツの乗用車全体の販売数は約6万1300台となる。2019年になってからは、新型「GLE」、新型Bクラス、新型CLAの販売が始まっている。そうした中であって、全体の20%を新型Aクラスが占めるという結果だ。

続いて、メルセデス・ベンツのブランド全体の月別の販売数をチェックしてみると、新型Aクラスの納車がスタートした2018年12月の販売数は、8527台。年間販売台数が6万6000台程度で、月平均5000台強のメルセデス・ベンツとしてみれば、2018年12月の数字は飛びぬけて大きなものであった。

2019年7月に発売が開始された「Aクラスセダン」(写真:メルセデス・ベンツ)

また、Aクラスセダンの導入後の2019年9月も、7926台という大きな数字を記録した。新型Aクラスの人気の大きさを数字からも感じることができる。

売れ筋グレードを聞くと「『A 180 Style』が最多販売のグレードで、『A 200 d(ディーゼル)』も人気がございます」とのこと。「A 180 Style」も「A 200d」もベーシックなグレードではない。安さだけが人気の理由ではないということだろう。

購買層を聞けば「既存のオーナーの乗り換えももちろんございますが、若いお客様や新しいお客様(今まで車を所有していない)にもご選択いただいております」という答え。

若々しいデザインと最先端の技術により、新しい顧客を開拓する。そんなAクラスに期待されるミッションを、新型モデルはしっかりとクリアしている。新型Aクラスの発売1年の通信簿は、「文句なし、上々のモノであった」といえるだろう。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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