観光列車の座席に?「廃車新幹線」意外な使い道 コンコースの柱や天井に生まれ変わる車両も

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北陸新幹線の部品も気になるところだ。10月に日本を襲った台風19号の影響で千曲川が氾濫し、北陸新幹線の長野新幹線車両センターが冠水した。現地の浸水が解消された15日から点検を開始したところ、車両基地内に留置されていたJR東日本の新幹線E7系8編成と、JR西日本の新幹線W7系2編成の計10編成が客室内の床下まで水浸しになった。

調査の結果、修理は困難として廃車に。北陸新幹線・長野―金沢間の開業は2015年で、デビューからわずか数年しか走っていないのE7系とW7系が廃車とは、熊本地震で廃車になった800系以上にもったいない。800系のように座席を再利用してもよいのではと思えるが、客室内の状況を知る関係者によれば、「氾濫した水は必ずしもきれいではなく臭いももきつい。清掃すれば元に戻るというレベルではない」。

高価なグランクラスのシートも本革やウールを使っており、汚れに決して強いとはいえず、廃棄せざるをえないという。

せめて保存はできないか…

床下にはさまざまな電気機器が設置され、一度水に浸かった部品を再利用するのはリスクが高すぎる。台車もさびがひどいという。車両構体は再利用できるのではないかと思ったが、「新幹線の車両は外板と骨組みを一体化したダブルスキン構造を用いており、構体の間には隙間が多い。この隙間に汚水が入ってしまうと除去することはできない」(前述の関係者)。

結局、再利用が可能だとしても、車体の上部に設置されているLED表示装置やパンタグラフといった一部の部品に限られる。そもそも、車両の製造は車両基地ではなく、遠く離れた場所にある車両メーカーが行うため、取り外して新品同様に戻すコストや輸送コストを考えれば大したコスト削減にはつながらず、新しい部品を使うほうが手間がかからないという可能性もある。

それでも、これだけ人気のある新幹線車両を廃車するのは残念だ。車両の先頭部だけでも公園や幼稚園などで保存できれば、地域の人気者になることは間違いないと思われるのだが、いかがだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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