観光列車の座席に?「廃車新幹線」意外な使い道 コンコースの柱や天井に生まれ変わる車両も

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九州新幹線には35パーミルの急勾配区間があり、登りきるために全車両にモーターが搭載されている。また、東海道・山陽新幹線の車両は、終着駅到着後の折り返し運転に際し、スタッフが手作業で座席の向きを変えているが、800系の座席には自動回転装置が設置されており、乗務員のスイッチ操作1つで、自動で回転できるようになっている。これらの理由から800系の車両の軸重はどんどん重くなってしまう。

【2019年12月9日12時30分追記】記事初出時、東海道・山陽新幹線の折り返し運転に際する記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。 

九州新幹線800系の座席(記者撮影)

そのため、ほかの部品を軽量化して車両の重さを一定内に収める必要があった。「車内でいちばんたくさんあるものは座席。一つひとつの座席の重さを少しずつ軽くすれば、全体の軽量化につながるはず」と、800系開発当時、運輸部長を務めていたJR九州の青柳俊彦社長が振り返る。

この結果、採用されたのがプライウッドと呼ばれる合板だ。800系のデザイナーでもある水戸岡氏が「いい素材を使うとみんな丁寧に扱ってくれる」と言うとおり、「みなさんから大事に使っていただいています」(青柳社長)。キャリーバッグなどによる引っかき傷がつくこともあるが、丁寧にメンテナンスを施して、美しい状態を保っている。

新幹線700系のアルミも再活用

車両は廃車になったが、座席を捨ててしまうのはあまりにもったいない。787系は九州新幹線・鹿児島中央―新八代間が開業すると、特急「リレーつばめ」に生まれ変わり、新八代―博多間で新幹線の乗客を輸送した。その800系の座席が36ぷらす3に使われるとしたら、これはもう縁としかいいようがない。

水戸岡氏の新たな座席デザインを見てみたい気もするが、800系の座席の再利用には環境配慮という大義名分がある。多少のコスト削減効果もありそうだ。再利用といえども、水戸岡氏のことだから、座席にあっと驚くような改造を施すかもしれない。デザインやコストの観点からどちらが選ばれるか、興味津々だ。

廃車になった新幹線の部品再利用という点では、JR東海もユニークな取り組みを行う。2020年春までに東海道新幹線から引退する新幹線「700系」の車体に使用されていたアルミを再活用し、同年初夏に東京駅八重洲北口にオープンする専門店街「東京ギフトパレット」と周辺のコンコースの柱や天井などに使用するのだ。

「東海道新幹線ならではの上質感のある空間を演出したい」というのが、JR東海のコンセプト。アルミを使って、桜の花びらや「のれん」をイメージした装飾を施すという。

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