義父母の世話を見続けた長男の嫁まさかの悲劇 特別寄与分をもらうために備えるべきこと

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この理不尽を解消すべく、昨年の民法の改正により、2019年7月1日以降に発生する相続から「特別の寄与」という制度が適用できるようになりました。

従来の制度に比べ、こちらの対象者は特別な貢献をした「被相続人の親族」にまで広がったのです。

嫁は「相続人」ではありませんが当然「親族」ですから、無償で貢献した分を「特別寄与料」として、相続人に対し金銭で請求することが可能となったのです。この新制度のおかげで、無償の貢献が報われるという実質的な公平性が図られることとなりました。

この制度の流れですが、遺産分割協議は、複雑にならないように従来どおり相続人同士で行います。そのうえで、特別寄与者が特別寄与料という金銭を、各相続人に請求するという仕組みです。

税務上はどうなるのでしょう? このケースでは、特別寄与者である英子さんは、特別寄与料を遺贈により取得したものとみなされ、相続税が課税されます。また、英子さんは義父の一親等の血族ではないため、「2割加算」という制度が適用され相続税が2割増しになります。しかし、贈与税ではなく相続税の枠組みの中で解決できる点は、一般的に税負担が抑えられるため、大きなメリットと言えます。

特別寄与料を支払う相続人、このケースの義弟と義妹は、支払う特別寄与料を各人の相続税の課税価格から控除して相続税を算出することとなります。簡単に言いますと、特別寄与料を払うとその分は相続税が低くなる、ということです。

息子が生きているのに嫁がもらうと相続税が2割増し

英子さんのケースは、長男である夫が義父母より先に亡くなったため、相続人ではない英子さんが何とか相続財産の分配にあずかるには、特別寄与料を請求するしかありませんでした。

ところが、もし夫(息子)が生きていた場合、注意しなければならない点があります。

相続人が長男と次男の例で見てみましょう。長男が「自分の嫁が介護を頑張ったから、嫁にも取り分を」ということで、嫁が特別寄与料を請求する。嫁思いのいいご主人ですが、先ほどご説明したとおり嫁がもらう分については「2割加算」という制度の対象となるため、相続税が2割増しとなってしまいます。

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