世界のエリートがあえて「借金」を背負う理由 「借金=悪」の常識に縛られると成功できない
「借金を持つことで、よりよい暮らしを実現する」というのは、会計学に基づいた考え方です。借金など「他人資本」を使い、少ない「自己資本」で大きな収益を上げる。これを「財務レバレッジを上げる」といいます。企業経営においても重要な考え方です。
「財務レバレッジを上げることができない」と指摘されるのが日本企業です。私は、証券アナリストとして世界中の投資家と対話をしてきましたが、「日本企業はキャッシュを持ちすぎている」とたびたび言われました。「日本企業は財務が健全」といえば聞こえはいいかもしれませんが、企業に成長を求める投資家からすると「キャッシュを事業投資に回さない日本企業は成長する気がない」と見られるのです。
具体例を挙げると、キヤノンは無借金経営で有名ですが、業績が芳しくありません。2018年12月期の売上高は3兆9519億円、また営業利益は3429億円ですが、同社による19年12月期の業績予想は、それぞれ3兆7450億円、2150億円と大幅な減収減益です。
その一方、財務は健全で、現金から借金を差し引いたネットキャッシュは1201億円もあります。でも、この1201億円のキャッシュを置いておくだけでは何も新しい事業を生み出しません。業績拡大はおろか、雇用創出もできません。社員の成長機会すら奪っているといえます。
私たち個人の営みも、こうした企業の経営と何ら変わりません。貯金を多く持てば暮らしが必ずよくなるというわけではなく、借金を持つことでよりよい暮らしを手に入れられることもあるのです。
返済終了後の「価値」を見通してから借りるべき
返済計画に無理がなければ、少ない資金で大きいものを手に入れられるのが借金です。しかし、むやみやたらにお金を借りるのは「正しい借金」とはいえません。企業が借金をして事業に投資するように、私たちの借金も価値が残るものやお金を生み出すものに使わないといけません。
家を買う住宅ローンも、大学に通うための教育ローンも、正しい借金といえるでしょう。住宅ローンを返済すれば最終的に持ち家が手に入ります。価値が残るわけです。また、教育ローンを使って大学で学び、将来の安定した仕事につながれば、これはお金を生み出すための借金といえます。
一方で、車や洋服といった「自分をよりよく見せるアイテム」のためにお金を借りるのは正しいでしょうか。これらは、ローン返済後には価値がゼロになりかねません。借金で買うものではなく、余剰資金で購入すべきものです。
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