イギリスの総選挙と「ブレグジット」のゆくえ 12月12日に行われる総選挙が「分岐点」となる
しかし、またもや議会がジョンソン首相の希望を打ち砕いた。10月21日に提出された関連法案の審議を行うことについては賛成多数で可決されたものの、審議期間を3日間に限定する政府の動議は、法案の重要性に鑑みて慎重な審議を求める声があったことから反対多数で否決されたのである。
その結果、10月末での離脱の可能性は閉ざされた。一方、英国議会の対応を注視していたEUは、2020年1月31日を新たな離脱期限として設定した。
離脱期限が3カ月延長されたことで、期限切れでの「合意なき離脱」の危険はひとまず回避された。そして、焦点は袋小路に陥ったEU離脱プロセスを打開するための解散総選挙に移った。実は、ジョンソン首相は、9月初旬に「合意なき離脱」を阻止するための法律が制定された際、離脱交渉を行う政府の立場が制約されることに反発して、解散総選挙を求める動議を下院に提出していた。
しかし、このときには、野党の賛成が得られず総選挙は実現しなかった。2011年固定会期法により、解散総選挙を求める動議が可決するためには、下院議員の3分の2以上の賛成が必要であるが、保守党が過半数を持たない中で賛成票は3分の2をはるかに下回ったのである。
労働党など野党は総選挙自体に反対していたわけではない。野党の反対理由は、総選挙の前に離脱期限の延長を確定させるべきというところにあった。延長が確定する前に総選挙を行うことは、「合意なき離脱」の危険があると考えられたのである。
例えば、ジョンソン首相が野党の賛成を得て議会を解散した後、投票日を11月に設定すれば、10月末に期限切れでの「合意なき離脱」が到来する危険があると指摘された。このようにジョンソン首相に対する野党の信頼が低かったことから、EU離脱プロセスを打開するための解散総選挙を実現するのは困難だったのである。
しかし、離脱期限の1月末への延長が確定したことで「合意なき離脱」の危険はひとまず回避され、事態は解散総選挙へ向けて急速に動いていくことになった。固定会期法の適用を回避して早期解散総選挙を実現するための法案が議会に提出されたところ、与野党の賛成により3分の2を超える圧倒的多数で可決成立したのである。その結果、12月12日に総選挙が実施されることになった。
保守党の勝利か、ハング・パーラメントか
かくてBREXITの行方は総選挙の結果次第ということになったわけだが、総選挙後にどのような展開が考えられるだろうか。
可能性が高いとみられているのは、保守党が過半数議席を獲得して総選挙に勝利し、ジョンソン首相の離脱協定案が議会で承認されて1月末での離脱が達成されるというシナリオである。政党支持率に関して保守党が労働党を大きく引き離していることから、このシナリオが現実化することは十分考えられる。また、離脱票をめぐって競合するEU離脱党が、立候補者を大幅に縮小したことも保守党への追い風となった。
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