イオン、英社提携でネットスーパー浮上なるか 2023年に専用倉庫を設立、AIで物流最適化も

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だが、食品販売に占めるEC比率がまだ4%程度に過ぎない日本において、イオンがネットスーパーを急拡大するのは簡単ではない。

ひとつは鮮度の問題だ。全国各地に有力なスーパーがひしめく日本では、新鮮な野菜や魚、肉などを買い求めやすい環境にある。現在、ネットスーパーで利用されているものは、運ぶのに苦労する大容量のペットボトルやお米など、一定の商品に限定されている。ネットスーパーを本格浸透させるためには、生鮮食材の注文を増やす必要がある。

ネットスーパーはどこも赤字だが・・・

この点について、イオンの吉田副社長はオカドに期待を寄せる。「オカドのシステムは、商品がダイレクトにウエアハウス(中央集約型倉庫)に届き、そこからお客さんの自宅に直送するので、配送時間が短くできる。また、ウエアハウスで温度管理をきちっとできているだけでなく、配送車にも保冷庫があるため、温度管理を意識したチェーンが組まれている」(吉田副社長)

「知識生産性における競争に勝ち抜いていける企業に変身していかなければならない」と説くイオンの岡田社長(撮影:今井康一)

コストの問題も、大きな課題だ。ある食品業界関係者は「日本のネットスーパー事業は、どこも赤字」と話す。イオンだけでなく、オカドも先行投資負担で2018年度の税引き前損益は約60億円の赤字だった。

もともと、労働集約型産業のひとつである食品スーパーは利益率が低い。ネットスーパーは店員が商品をピッキングして梱包し、運送の手配までする。わざわざ「買い物代行」をしているようなもので、食品スーパー以上にコスト高だ。さらに、昨今のドライバー不足による物流費高騰がのし掛かる。

この点についても、イオンはオカドとの提携により倉庫出荷型のシステムを確立できれば、効率性が改善する可能性もある。「2030年にはネットスーパーを黒字化に持っていきたい」と、吉田副社長は強調する。

アメリカのウォルマート傘下の食品スーパー・西友はIT大手の楽天と提携し、ネットスーパーを拡大している。アマゾンも、関東と関西圏に店舗網を持つライフコーポレーションと協業して、日本での食品EC拡大をもくろんでいる。

イオンの岡田社長は、ピーター・ドラッカーのかつての未来予測が現代社会で次々と実現していることを引き合いに出しながら、「知識生産性における競争に勝ち抜いていける企業に、イオンは変身していかなければならない」と説く。

リアル店舗をデジタル技術と有機的に結び付け、アマゾンやウォルマートにいかに打ち勝っていくのか。オカドとの提携で、イオンは新たな競争領域に入った。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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