20年間「デパス」を飲み続ける彼女の切実な事情 服用患者は確かな効果を得ても続かず不安に

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結局、沙智さんはデパス(エチゾラム)の乱用と診断され、精神病院の閉鎖病棟に約3カ月間入院し、デパス(エチゾラム)の離脱が行われた。この離脱は完全に服用を止めるのではなく、用法・用量に定められた1日3錠以内に抑えるのが目的だ。この結果、現在も1mg錠の1日2回合計2錠の服用を続けている。

そして現在はデパス(エチゾラム)も含め、服用している薬は保険調剤薬局で一包化してもらっている。通常、保険調剤薬局で薬を受け取る際は同じ薬が10錠単位などのシート状になったものをもらう人が多いはずだ。

これに対し一包化とは複数の薬を服用する人向けに、錠剤をシートから出して朝昼晩など飲むタイミングに分けて1つの薬包に包装し直す。一般には服用する薬の多い高齢者などで飲み忘れを防ぐために行う対応だが、沙智さんの場合はやや意味が違う。夫の嶺二さんが説明する。

「要はデパスをシートでもらうと1度にたくさん服用してしまう危険があるためです」

その嶺二さんも2018年8月からデパス(エチゾラム)を処方されている。勤務先でトラブルを抱えたことからうつ病になったのがきっかけだ。嶺二さんの場合は0.5mg錠を1日2回服用している。

「妻を見ているので、危険なことはわかっています。注意しながら服用しています」

デパス(エチゾラム)の服用量を減らした沙智さんはかつてのように薬の耐性を感じることはなくなったというが、それでも涙ながらに不満を訴える。

「服用するな」は「死ね」と同じ意味

「今の医師からは『なるべく服用しちゃダメ』と言われますが、急にそう言われても困ります。いきなり減らしたので、服用しないと力が出ないし、死にたいと思ってしまうんです。起きているときはつねにそうです。だから薬を服用して、ボーっとさせるんです。

与えられた薬でコントロールするしかないのですが、デパス(エチゾラム)の服用量を減らした今も普通に生活ができないのがいちばん困ります。実際に苦しんでいる私には、『服用するな』は『死ね』と同じ意味です。患者にとってはありがた迷惑です。だから医師が信用できません。だって、(苦しみを)わかってくれませんから」

デパス(エチゾラム)を10年にわたって服用していたという四国在住の北方直樹さん(40代後半)にも話を聞いた。北方さんがデパス(エチゾラム)を服用し始めたのは大学生の頃だ。

「たまたま交通事故をきっかけに精神に問題を抱え、抗不安薬の処方を開始したのですが、主治医の処方は何回も変わりました。効果が実感できなかったためですが、そうした中で最終的にデパス(エチゾラム)を処方され、自分に合っていると感じました」

処方は1回当たり0.5mg錠、1日3回を基本に、頓服の分も処方されていたという。ちなみに頓服とは1日3回毎食後のような定期的な服用ではなく、あくまで症状があるときなどに一時的に薬を服用することを指す。

北方さんの服用当時は、デパス(エチゾラム)が麻薬及び向精神薬取締法の対象として指定を受ける前だったが、すでに向精神薬指定を受けていたほかの薬も併用していたため30日おきに医療機関を受診した。デパス服用中に接した主治医は2人。いずれの医師からもデパス(エチゾラム)の依存性について聞かされたことはなかったという。

1日3回が基本だったが、時に不安が強くなるなどしたときは頓服分のデパス(エチゾラム)に手を伸ばした。

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