長年の「鉄道の課題」は2020年代に解決できるか 鉄道総研が取り組む研究開発の一端

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地震対策の研究も連綿と続けられ、今般2019年8月にも鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER)が運用を開始した。国立防災科学技術研究所と協定を結び、同研究所から直接データを受けることにより鉄道構造物の被害ランクを即座に推定して登録事業者に情報提供し、迅速に設備点検や運転再開に結び付ける新システムである。

積年の研究開発で、いち早く地震をキャッチして列車を止めることは極限まで進んでいるので、発生後の復旧に資する研究開発が進んでいるようである。

横風の研究もクローズアップされるものだ。突風にあおられた列車が鉄橋や盛土上から転落する事故を契機に、風による運転規制が強化された。しかし、規制の基準を厳しくするほど列車の運行が阻害される例が頻発し、逆に問題化した。

そこで従来のようなピンポイントの測定、かつ一律の規制などを改善すべく、空気力学的にどのような受け方が危険なのか、逆にどのような風ならば運転を許容できるかを詳細に解析し、運休や運休区間を可能な限り絞ってゆこうとする研究が重要になったのだ。

大規模地震や津波に強い盛土構造なども、印象としては非常に単純な構造物だが、解析技術の進化により研究すべきことはまだまだあると言う。盛土の中にジオテキスタイル(強靭化のため織布や不織布)を敷き重ねて補強したり、底面にセメント改良礫土を敷く構造で大規模地震や津波を想定した強靭化を進める一方、コスト減のためのシンプルな法面工、用地を減らせる法面勾配なども研究されている。

ICT化で自動化も基礎研究も進展

これらの精度向上を支えているのが、事象を数値や数式で捉えるデジタル化、すなわちICTである。近年は各方面でビッグデータの活用等が盛んに進められている。昔から取り組んできた研究開発にしても、計算能力が向上すれば当然、今までは困難だった深い分析ができるようになる。そこに新たな研究開発が続く理由がある。鉄道総研では昨2018年、ICT化革新プロジェクトを立ち上げ、分野横断的な取り組みを進めている。

自動化も今、非常に重要度を増した課題である。今後の生産年齢人口の減少を念頭に置くと、今までのようなマンパワーに頼る業務形態は行き詰まる。鉄道利用者の減少も見込まれるので、時間もコストもかかる人手による作業は事業者の収益に大きく影響し、ひいては鉄道の存立問題に直結している。

自動化といえば昨今は自動運転が話題だが、鉄道総研で今回聞いたのは、メンテナンスの自動化である。その例として、「画像処理技術を活用したトンネル等の設備診断」を低コスト化の事例として挙げる。

従来は打音検査等で行っていたトンネル内の状態把握を、トンネルスキャナーを搭載した保守用車により行うもので、スキャンした画像をデジタル処理して変位や振動、圧力を数値化し、検査の高精度化を図る。得られたデータは自動的に蓄積されるので、経年変化等も自動的に判明する。

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