今では「二千円札」をすっかり見かけない背景 発行から20年余りで忘れゆく紙幣に…

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筆者自身が街中で調べた感じでは、当初の予想より二千円札が使えるという印象だ。しかし、銀行のATMで二千円札を出金できないことから、これが二千円札が流通しない理由だと感じた。

かつて、サラリーマンは給料日に封筒に入った現金をもらったが、現在は口座振り込みとなり、必要な現金はATMで引き出すことがほとんどであろう。沖縄ではATMで当たり前のように二千円札が出てくるという。ATMで手にする機会が沖縄を除いてほとんどないことが、二千円札が全国的に流通しなかった主な原因といえる。

日本銀行はホームページで、「二千円券の流通促進に向けて」というページを設けている。そこで掲載しているリーフレット「日本銀行券 弐千円物語-もっと身近にご利用いただくために」は二千円札発行当時のものと思われ、そこで示されているデータは発行した2000年当時のものだ。本気で利用促進する気があるようには思えない。

二千円札は忘れゆくお札になってしまうのか?

2020年には東京オリンピックを機会に多くの外国人が訪日する。財務省・日本銀行は観光庁とともに英語版「Japanese small cultural property 2000Yen Note」というリーフレットを日本語版と共に出している。彼らが二千円札を手に入れる機会がどの程度あるかは不明だが、利用時にけげんな態度を取られるようなことがあれば、「おもてなし」の心に反するだろう。

2019年4月9日に 麻生太郎財務相は2024年度上期をメドに一万円、五千円、千円の新紙幣を発行すると発表した。これに二千円札は含まれなかった。現に二千円札は需要が少ないことから、2003年度(平成15年度)以降は製造されていない。二千円札は不遇なお札として歴史に残るのだろうか。

細川 幸一 日本女子大学教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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