衝撃事実!GPIF理事長「処分」は謀略だった 160兆円を運用する年金ファンドの異常事態

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9月29日の逆転人事である。これは4年前の「GPIF某重大事件」と呼ばれた騒動の再現に見える。巨大ファンドを運用した経験もないBをGPIFに押し込んだのは、大阪つながりの世耕弘成官房副長官(当時)。これに対して当時の塩崎恭久厚労相が激怒、すったもんだの末に理事長を日銀出身の三谷隆博から高橋に代えて、B理事の重石として据えたことでやっと収拾されるということがあった。これが「GPIF某重大事件」である。

B理事は、自身の任期が迫り、せっぱつまって、またもや政治力に頼ったことが疑われる。しかも、自身の留任だけでなくA理事の留任までセットにし、世耕 → 菅義偉官房長官 → 杉田和博官房副長官(内閣人事局長)→ 厚労省と伝わって、GPIF人事は差し戻しになり、書類を作り直し、ハンコも押し直す異例の事態が起きたという推測が、関係者の間でささやかれている。

首相官邸による霞が関人事への介入はもう珍しいことではないが、今回は怪文書の謀略がらみだけに、新宿歌舞伎町まで尾行をつけた「前川喜平(元文科省次官)級の謀略人事」との見方もある。

とにかくGPIF監査委も29日に中間報告をまとめ、翌9月30日に経営委員会で理事長問題が議論されたが、すでに人事で勝負はついていた。理事の任命権は理事長にあるが、実質は厚労省と官邸が決めた人事に同意するだけ。10月6日、11日、18日の経営委員会はそのレールの上で、「迅速な内部対応を怠った」形式処分とした。「長いものに巻かれ」て、処分に加担したのだ。B理事も監査委の調査に対して「車に乗る2人を見た」と証言している。

だが、女性からの告発により、怪文書の主の「謀略」が破綻に瀕した。

怪文書の主は、慌てて週刊誌に盗撮写真を持ち込んだ。告発状の3日後の11月14日、早くも週刊誌記者からはGPIFに対し問い合わせが来ているようだ。怪文書に書いてあった恫喝の台詞どおり、週刊誌にタレこんだわけであり、この手回しの早さは内部に謀略の主がいることを証明しているのではないか。10月29日付の日本経済新聞朝刊には「GPIF理事長は襟を正せ」という異例の社説が載ったが、これも謀略の主による手回しか。きわめて違和感のある社説である。

経営委員会は調査に消極的

通知書には、この女性が強いストレス下にあって不眠症に陥っているのに、GPIFからの電話が土日や夜間にもかかり、主治医に面談を申し込むなど、強引な調査手法が行われ、それに不信を抱いたとある。女性は9月17日に退社願を出して受理されたのに、事実調査を理由に受理を撤回された。これまた監査委が撤回を主張したからである。

11月18日に開かれたGPIF経営委員会はA理事のセクハラ調査を行なうことに消極的だという。その理由はA理事が「強く否定しているから」という。

これが事実ならば理不尽だ。匿名の怪文書を理由に高橋理事長を調査、本人の否定にもかかわらず処分を下しながら、堂々と代理人弁護士を立てた正規の被害者の申し立てをはねつけ、被疑者の言い分を一方的に鵜呑みにするなど論外だろう。A理事を調べれば「誤審」とされかねない経営委が、保身に走ってもみ消す気なのだろうか。しかし、本稿によって「もみ消し工作」は水泡に帰すはずだ。

A理事、B理事が怪文書に関与したかどうかを含めて、GPIFに質問状を送ったが、11月19日の回答は「リリース以外のことはノーコメント」というもの。それならば、2人の理事のメールなどの履歴を確かめることを要求したい。公的年金160兆円の運用を国民に負託されながら「セクハラ・パワハラ組織」と化したGPIFのせめてもの贖罪を拒むなら、経営委の9人も『オリエント急行事件』のようにグルと認定せざるをえない。

【2019年11月22日10時35分追記】正確を期すため、初出の記事に一部を加筆しました。

【2019年11月25日6時52分追記】正確を期すため、初出の記事に一部を加筆しました。

【2019年11月29日15時03分追記】関係者のプライバシーに配慮して一部表現を見直しました。

チーム「ストイカ」

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独立してオピニオン誌を準備中の阿部重夫が、臨機応変に記者と組んで取材するチーム。今回は伊藤博敏、樫原弘志その他の協力を得た。

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