まるで"強制収容所"引きこもり支援の壮絶実態 ある日突然連れ去られた30代男性が語る

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「法外なお金を請求する。半年で500万円。親御さんは老後の資金でも子どものためなら、と払ってしまう。子どもから暴力、暴言を吐かれてつらいというご家族は、短期間でも預かってくれるなら、解決するならとしかたなく頼ってしまうんです」(前出・深谷氏)

親は、まずは業者に相談を持ちかけるが、そのペースにまんまと絡め取られてしまう。

「ひきこもり新聞」を発行する木村ナオヒロ氏は、

「施設から何時間も説得され、“お子さんを救えるのは私たちしかいない”と言われ、強引に契約を結ばされます」

と手口を明かす。

逃げられないとわかって外出させる

しかし、関係者らは「半年で解決は絶対に無理。就労がゴールではない」と口をそろえるが、焦る親は業者の言葉に惑わされる。

前出・山下さんの親も、業者にそそのかされた口だ。

「放置すれば犯罪者、暴力をふるうようになると不安にさせられ」(山下さん)、2018年4月に契約。その翌月の5月3日午前11時ごろ、山下さんは突如、見ず知らずの男4人によって無理やり自宅から連れ去られることになる。

「父親から“今からこの人たちにお世話になりなさい”と言われました。男のひとりが“今から私たちのところへ来てもらいます”と言ってきましたが、さっぱり意味がわからない。“拒否する権利はない”と迫り、私の腕をつかんでリビングの机の上に身体を押しつけ、そのまま上に乗られました。明らかに暴行です」

外に出た山下さんは車の後部座席に押し込められた。

抵抗するうちに左足のくるぶしを車に強打した。傷は今でもうっすらと残っている。山下さんは東京都新宿区にある施設の地下室に連行された。広い部屋に何台かのベッド。ほかの入所者はいなかった。監視役、説得役に24時間常に見張られる生活。外部との連絡は親も含め遮断された。

「連れてこられたショックと外に出られない圧迫感とで、食事がのどを通りませんでした。“帰してください”と言っても“ここで生活してもらう”“外に出してください”には“外出は認めてない”の一点張り。“稼ぎのない未成熟子”と罵られました」

山下さんが軟禁された地下室。室外機で日光はほとんど差し込まず明かり取りは天窓だけ(写真:週刊女性PRIME)

8日間、固形物をとらずに衰弱した山下さんは、点滴を打つために足立区の病院の精神科へ運ばれ、隔離病棟に強制入院。その際、人目を避け購入したテレホンカードが、後々役立つことになる。

「施設に戻ってからは朝8時から夜6時まで業者の教室に通いました。散歩の時間もあり、自由に外出もできましたが、お金は持てず、携帯もなく、実家に戻っても連れ戻されるだけなので帰れず……。結局、施設に戻るしかないんです。私たちが逃げられないとわかっていて外出させていたんです」(山下さん)

散歩の途中、施設のやり方に疑問を持つほかの入所者と連携し、公衆電話から法テラスや人権団体に電話をかけた。

「支援してくれる先生方と出会い、私たちは脱出できたんです。昨年8月のことです。弁護士経由で実態を知ることになった親には“悪かった”と謝罪されました」と、山下さんは今年2月、業者に対し損害賠償の裁判を起こした。

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