「CSR=社会貢献」という考えは、時代遅れ 欧州がリードする、CSRの「2020戦略」とは?

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「欧州CSR戦略」を押さえなければ、生き残れない

「欧州CSR新戦略」は2011年から2014年に遂行するアジェンダとして、大きく8つのカテゴリに分け着々と実行されている。その事例のひとつとして、CSRに関する情報開示の義務化がある。デンマークやフランスなど各国法でCSR報告書の発行を義務化している国もあるが、欧州委員会は2013年4月、会計指令改訂案を公表、欧州の大企業に対して、環境、社会、人権、腐敗防止や贈賄などを含む非財務情報の開示の拡大を意図している。

リチャード・ヒューイット欧州議会議員(CSR担当)によると「欧州議会において順調に審議されており、2014年4月までに可決される方向で進んでいる」とのこと。義務化は目前という状況だ。

また、企業にかかわる人権問題の推進もある。これは国連から2011年3月に発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」を基本として、欧州連合加盟国とその企業に活動を促すものだ。欧州連合は、加盟国に、この指導原則に沿った法制化を求めており、英国はすでに2013年9月に国家行動計画として「グッドビジネス:国連ビジネスと人権に関する指導原則の実践」を発表している。

これは世界で初めて指導原則の実践を国家行動計画として定めたもので、英国の今後2年間の行動計画が定められている。そのほか加盟国では、オランダ、スペイン、イタリア、フィンランド、デンマークが、国家行動計画の発行に向けて準備中で、2014年前半に発行予定としている。

また、指導原則の実践にかかわる施策として、すでに3つの業界「石油&ガス」「情報通信技術(ICT)」「人材紹介会社」向けに「人権ガイド」を発行した。さらに、中小企業についても、人権についての配慮を促すために「中小企業の為の人権入門ガイド」を発行し、企業にかかわる人権について活動を促している。

そのほかにも、国連グローバル・コンパクトやCSRの国際ガイダンス文書であるISO26000などの世界的なCSRの基準・原則の積極的な活用も戦略の中で企業に促している。

このように、現在のCSRのグローバルな状況は、欧州連合がCSRを政策的に進め、加盟国へCSRの推進を促しながら、企業やNGO、その他のステークホルダーを巻き込んで活動を実施しており、その動きが世界を牽引していると考えてよい。特に多国籍で活動している日本企業は、日本国内を中心としたCSR活動ではなく、世界の各拠点を含むグローバル・スタンダードのCSRの実践が望まれているのである。

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下田屋 毅 サステイナビジョン代表取締役

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しもたや たけし

 下田屋 毅 しもたや たけし Sustainavision Ltd. (サステイナビジョン)代表取締役

英国ロンドン在住CSRコンサルタント。日本と欧州とのCSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、CSRコンサルティング、CSR研修、CSR関連リサーチを実施。
1991年大手重工メーカー入社。労働安全衛生主担当として、「安全衛生管理要綱」作成、「安全内部監査制度」を企画・導入を実施。他に事業部PR・広報宣伝強化のプロジェクトマネジャーなども担当。環境ビジネスの新規事業会社立ち上げ後2007年に渡英。英国イースト・アングリア大学環境科学修士、英国ランカスター大学MBA(経営学修士)修了。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤教員(担当:CSR)、国際交流基金ロンドンCSRセミナーシリーズ2011/2012プロジェクトアドバイザー。
サステイナビジョン・ウェブサイト: http://www.sustainavisionltd.com/

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