2020年大統領選はトランプ対ウォーレンなのか 支持者を増やしてきたウォーレンの正念場

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政治家となる前のウォーレン氏はハーバード大学ロースクールで破産法の教授を務め、中間層を守るため、その知識を基に専門家として政府に助言してきた。破産に関するルーツはオクラホマ州で過ごした幼少の12歳までさかのぼる。

当時、カーペット営業マンの父親が心臓発作で倒れて職を失い、多額の医療費が積み重なる中、自宅のステーションワゴンが差し押さえられたという。しかし、母親がデパートのシアーズに最低賃金で働きに出たことで家までが差し押さえられることは免れたと、ウォーレン氏は語る。

ディベート能力が評価され、大学に奨学金で進学。破産法の教授として、1995年に国家破産審査委員会の上級顧問に就任、これをきっかけに政治に関わる。2008年のリーマンショックを契機とする金融危機で設置された不良資産救済プログラム(TARP)の施行を監視する議会監督委員会の議長を務め、消費者金融保護局設立の中心的役割を担った後、上院議員に出馬して政界入りした。

中間層が主に病気、離婚、失職によって自らの責任とはいえない理由で破産することを学び、アメリカ政治は企業寄りの政策を続けており、壊れた仕組みであると、長年、批判してきた。アメリカの中間層を回復するには、その仕組みを抜本的に改革する必要があるとして、政界入りし、今回、大統領選に挑んでいる。

ウォーレン氏には、このように、「自らが破産の危機に直面して、政府の役割や被害者の支援といった問題に人生の大半をささげてきた」というストーリーがある。個人的なストーリーを幅広い国民が懸念する社会問題に関連づけ、「共に改革を推し進めよう」と呼びかけることで、有権者の共感を得ることに成功している。バラク・オバマ前大統領も、「他国と違いアメリカでは、黒人で変わった名前であっても、何事も達成可能なのだ」といった希望を個人のストーリーをもとに語り、政治システムの変革を掲げて当選した。

「政策通」のイメージを有権者に植え付けた

ウォーレンの強みは難しい問題をかみ砕いて誰にでも分かりやすく説明することに長けていることだ。ウォーレンのもとで働いていた筆者の知人によると、同氏は政策の詳細まで詰めるという。ウォーレンは多くの人にも分かるようにシンプルに説明することもできる一方、政策通の人物に詳細まで説明することもできるのだという。このスキルは同氏が長年、教鞭をとった経験で培ったと思われる。ウォーレンは政策通としてまず、アメリカ政界で知名度が高まり、その後、政治家に転身した。

対抗馬から攻撃を受ける材料を増やしかねないことから、選挙戦においては一部の政策では詳細を発表しても大部分は発表しないのが、これまでの通常のやり方だ。だが、この定説を覆そうとしているのがウォーレンだ。

キャンペーンの政策チームには力を入れており、ウォーレン上院議員事務所で立法ディレクターを務めていたジョン・ドネンバーグ氏を政策ディレクターとして登用し、エール大学やハーバード大学出身の政策通のスタッフやアドバイザーを多数揃えているという。

「私にはそれについて政策がある(I have a plan for that)」。ウォーレンの支持者集会でよく聞かれる言葉だ。他の候補も政策を打ち出しているものの、ウォーレンは「政策通」であるとのイメージを有権者に植え付けることに成功している。

トランプ大統領の下では、熟慮なしに突発的に政策が発表されるケースが増えている。こうした中、ウォーレン氏の戦略は効果を発揮しているようだ。次々に発表される政策が、随時ニュースに取り上げられて、支持率上昇につながったとも見られている。他方、バイデンは「トランプ打倒」「勝てる候補」というアピールであり、ニュース性に欠ける。

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