自分で会社を起こせない人がためらう条件4選 リスクを考えれば零細企業で苦労しなくとも

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4. 進んでリスクを負えるか

大手企業で成功するのは容易なことではなく、そこでは独特なスキルが求められもする。

他人と仲よくし、至る所で見られる不公正やでたらめに耐え、抜け目なく振る舞わなければならないだろう。そして関係者の目に留まるようにして、なおかつ業績を上げ、役員レベルの支援を取り付けることも必要だ。

何かと、面倒なことが少なくないわけである。しかしリスクを考えると、もしも大企業でうまくやっていけるのであれば、そのままそこにい続けたほうがいいとギャロウェイ氏は言う。あえて零細企業で苦労することはないというのだ。

ギャロウェイ氏にとって、起業は生き残りの手段だったそうだ。なぜなら、経済的な成功のための史上最大のプラットフォーム、アメリカの企業で成功するスキルを持っていなかったから。

巷では大学中退者が億万長者になるような物語が喧伝されているため、われわれは起業家を美化してしまっているとギャロウェイ氏は指摘する。確かにそのとおりで、“感覚的に”納得できる方も多いのではないだろうか。

だからこそ自分の性格やスキルについて、自分自身、そして信頼できる人々にこれら4つのことを聞いてみるべき。

『GAFA』とはタイプの異なる1冊

その結果、もしも最初の2つがイエスで、大企業で働くスキルがないのであれば、「無秩序なサルが動き回っている起業という檻」の中に入ってみるのもいいかもしれないという。

『ニューヨーク大学人気講義 HAPPINESS(ハピネス)――GAFA時代の人生戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのページにジャンプします)

何しろ学生向けの講義を書籍化したものなので、つまり目的も訴えようとしていることも異なるため、『GAFA』が与えてくれたような納得感もしくは感動のようなものをここに求めることはできないだろう。

そんな気持ちのままでページをめくったとしたら、直接的かつ感情的な表現に戸惑うことになるかもしれない。また個人的には、手放しで共感できないような箇所もいくつかあった。

しかし、それは読者一人ひとりの問題だ。

それに、ここに収められた講義を聴いていた学生たちのように、これからの生き方について悩み、アドバイスを求めたいと思っているのであれば、本書はきっと有効だ。長きにわたり、手放したくない1冊となってくれるかもしれない。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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