創業100周年に「全社員に100株」配る会社の狙い 東証1部、兵庫の設備メーカーの「ある大英断」

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増配の恩恵は、新たに株主となる社員にも及ぶ。今2020年3月期は記念配を含めて40円(株式分割後)を予定しているので、2万円ものお小遣いとなる。こうなると、社員も会社の資本政策などに関心を持たざるをえないだろう。

「国内の建設投資はもう伸びない」と語る日工の辻勝社長(記者撮影)

社員に株を持ってもらうのは、今後の成長戦略への理解を深めてもらう意味がより大きい。同社は2022年3月期までの3年計画で、2019年3月期に317億円の売上高を380億円に、14億円だった営業利益を30億円に引き上げることを目指している。

日工はアスファルト合材の製造プラントに加え、コンクリートプラントも手がける。こちらも国内シェアは4割近い。しかし、アスファルト合材もコンクリートも国内需要は頭打ち。今後は設備の保守・修繕などが伸びしろとして期待されている。その先に見据えているのは、海外市場だ。

時価総額を500億円へ引き上げ

「国内の建設投資はもう伸びない。一方で、日本企業の技術への評価は海外で非常に高い。とくにASEANでの需要が本格的に伸びており、何らかの拠点を設けることで壁が破れるのではないか」(辻社長)。海外展開や新規事業による成長と積極的な還元策によって、10年後には現状300億円弱の時価総額を500億円まで引き上げようという野心的な計画を掲げる。

しかし、日工の連結従業員数は800人あまりの規模で、海外進出にも新規事業にも多くの人員は割けない。複数の業務に熟達した社員を少数精鋭で配置せざるをえない。そういう人材を育てるためには、会社の全体像を知ってもらうことが一丁目一番地だ。

分業によって生産性を上げるのは製造業の常道だが、ともすると社内がタコツボ化してしまう。「団塊の世代の先輩方にはオールラウンドに知識を持っている人材が多かったが、いまは分業の弊害が出ている。リーダーには社内のすべての製品を愛する心構えが重要」と辻社長は語る。

道路工事業者にあまねくアスファルト合材を供給するという仕事柄、日工は日本中に営業拠点を持っている。これまでは本社のある明石で採用した社員を全国に転勤させてきたが、今後は拠点ごとの採用が増えていく流れにある。

タコツボ化の打破と組織の一体感の維持。この両面で経営陣は「社員の株主化」に大きな期待をかけている。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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