若手官僚が喜ぶ? 事務次官等会議の廃止
「なぜ、中央官庁の人はそんなに働くの?」とよく聞かれるが、法律案作成の際、その労力の多く(感覚的には7割くらい)は、法律案自体をつくることにではなく、「関係他省庁との調整」に使っていた。
たとえば、リサイクルにしても通産省所管のものだけではなく、建材や道路工事の廃材なども法律の対象となる。そうなるとこれらを所管している建設省(現国土交通省)と交渉をしなければならない。また、農家の省エネは農水省の所管だし、リサイクルとなると廃棄物処理法を所管している厚生省(現厚生労働省)や環境問題を所管する環境庁(現環境省)との調整も必要となるわけだ。
1994年当時は、電子メールがいまほど発達していなかったので、調整をすべき事項があるとファクシミリを使って法律案に関係する各省庁に法案条文ごとに連絡する。ちょっとした法文修正でも関係省庁にすべて連絡して、了解を得なければならない。
そして調整ができないときは、どんどん上司が調整していくことになる。最後の最後に調整をするのが事務次官ということになるわけだ。
筆者の担当した部分(分担を決めて法律案を作成していた)では、建設省との間で、法律に関する事業の予算の分担で、局長交渉をした。この幹部への説明や交渉の場の設定など、これも楽な仕事ではない(厳しい環境にいると気心が通じるものなのか、当時の建設省の担当者とはいまでも付き合いがある。ストックホルム症候群※的なもの?)。
※犯罪被害者が犯人と時間・空間を共有することで、被害者が犯人に対して同情心や好意を抱くという精神医学用語
なぜ、こんなに調整をやらなければならないかというと、法律案は、国会で可決されなければ法律にならないからだ。そして政府から国会に法案を提出するためには、閣議を「多数決ではなく全会一致」によって採択されなければならないからである。つまり、1人でも大臣が「だめ」といえば法案は国会に送られないことになるのだ。