新幹線優先?密室で「青函貨物廃止」案を議論中 東京―札幌間「4時間半」実現への最大の難所

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時間短縮の方策は2つある。まず、車両性能の向上だ。JR東日本は次世代試験車両「ALFA-X」を開発し、営業最高速度の引き上げに動き出した。また、盛岡以北の区間は法令上最高時速が260kmに抑えられているが、国土交通省はそれを時速320kmに引き上げることを検討中だ。

青函トンネル内の「三線軌条」。北海道新幹線はトンネル内を含む約82kmを在来線と共用している(記者撮影)

だが、それだけでは不十分。最大の障害は、青函トンネルと前後の区間を合わせた約82kmを新幹線とJR貨物の在来線貨物列車が共用していることだ。2本のレールの間隔は新幹線が1435mm、在来線が1067mmと異なり、そのままでは共用走行できない。このため三線軌条という特殊な方法で両者の共存を実現した。三線軌条は仕組みが複雑で、保守作業に多額のコストがかかる。これもJR北海道の経営の圧迫要因となっている。

貨物列車の最高時速は110km。新幹線が時速260kmで走れば前方の貨物列車に追いついてしまう。また、高速走行する新幹線が貨物列車とすれ違う際に生じる風圧が安全を損なうおそれもあり、青函共用区間における新幹線の最高速度は時速160kmに抑えられている。

国が検討する4つの案

国の交通政策審議会は打開策として、「貨物新幹線」を開発し、在来線のコンテナ列車を丸ごと新幹線貨車に積み込んで高速走行させるという夢のような案まで検討した。だが、今のところ有力視されているのは、新幹線と貨物列車の走行時間帯を分けて、下り線(新青森→新函館北斗)のみ新幹線の高速走行を行う時間帯区分案。旅客需要が多く貨物需要が少ない年末年始やお盆、ゴールデンウィークなど特定の時期に限るとしている。

9月4日から10月21日にかけて青函トンネル内で新幹線の速度向上試験が実施された。台風19号の影響はあったものの、所定の試験は予定通り終了。結果を検証して安全性が確認されれば2020年度から実施される見通しだ。

さらに、国はこれらの案とは別に、昨年秋から水面下で議論を重ねていた。本誌が独自入手した資料によると、新たに4案が検討されている。

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