キャッシュレスが急速に浸透し始めた「必然」 メリットがあるのは消費者側だけじゃない

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一方、ハードウェア的な面ですんなり移行が進んでいる理由としては、コンビニなどの店舗にはすでにバーコードリーダーがあったため、新しい機器を導入せずとも、ソフトウェアだけで対応できたという事情もあると考えられます。詳しくは新刊『2049年「お金」消滅』で解説していますが、ハードウェアで物事を解決していた時代から、ソフトウェアで解決する時代へとすでに移行し始めていることの証左と言えます。

お店の立場に立ってみると

「でもそうは言っても、カードの入った財布をさっと取り出して、ピッとやったほうが便利では?」と一部の読者の方は食い下がるかもしれません。しかし、お店側に立てばまったく別の風景が見えてきます。

消費者側から見れば使い勝手のよい決済方法として、クレジットカードがあります。キャッシュレスという意味では、コンビニはもちろん、私が行きつけの理髪店など、多くのお店でクレジットカードは以前から使われていました。

しかしとくに日本では、決済手数料の面でお店にとって負担が生じてしまい、その先では、お店の「ポイントが付かない」など、ユーザーにまで負担が跳ね返っていたのも事実です。一方、スマホで済む決済方法では加盟店であるお店側への手数料負担をほとんど求めていません。これはお店にとっては大きなメリットです。

支払いが発生した際にその間を取り持つ決済事業者からすると、加盟店と消費者、どちらも開拓すべきユーザーであり、両側が顧客なのですから、加盟店にとっても魅力的になるようにビジネスを作り込むのは当然です。

現在、電子的な決済システムについては、加盟店にとっての導入コストがだんだん安くなり、事実上「無料」という流れが起きています。最小の設備構成としては、店頭にQRコードを掲げるだけで成立することから、導入にまつわる負担を極少に抑えられるのです。

過当競争の印象もある今は、決済事業者側が加盟店の獲得合戦をしており、お店からは「営業が煩わしい」といった声も聞かれているようですが、スマホ決済の急激な普及は基本的に「決済事業者とお店との間で一致した思惑が促した」と言えそうです。

なお、スマホ決済を運営している会社は、それでどこから利益を得ているかと言えば、例えば、データを集めて商流を分析し、それをメーカーへ売ったりすることでコストを吸収できます。データが強い力を持つ現代の社会では、キャッシュポイント(収益を生む機会)は決済の場面とはまた別の場所に設定できるのです。

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