粘り腰でam/pmを買収したローソン、悲願の東京市場攻略への課題

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粘り腰でam/pmを買収したローソン、悲願の東京市場攻略への課題

交渉開始から7カ月、コンビニ2位のローソンがついに同7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)の買収を決めた。買収額は145億円、合併時期は2010年春となる見通し。

am/pmは旧共同石油の出資で1990年に発足。後発組ながら都心への集中出店で急拡大した。だが大手各社が攻勢を仕掛ける中、債務超過に転落。04年には外食チェーン「牛角」を展開するレックス・ホールディングスの傘下に入った。その後、レックスと協力する投資ファンド、アドバンテッジパートナーズ主導で経営再建を目指したが、07年度に再び122億円の債務超過となった。「ここ数年は資金調達がままならず、店舗改装などの資金が不足した」(am/pmの相澤利彦社長)。ファンド側も再生を断念し、売却へと動き出した。

長丁場の買収交渉

ファンド側が大手コンビニなど十数社に売却を打診したのは昨年7月。最も前向きな姿勢を示したのがローソンだった。だが買収交渉は想像以上に長引いたようだ。

「納得がいくまでやれ。その結果、他社に取られてもいい」。ローソンの新浪剛史社長は交渉期間中、強気の姿勢を崩さなかった。価格交渉でファンド側は200億円を超える額を提示。ローソンの提示額とは100億円以上の乖離があったという。その後、ファンド側の譲歩で差は縮まるが、「08年内に一度破談になりかけた」(関係者)とも。しかし資産査定でローソンは各店舗の立地や競合店、収益状況など情報開示をつぶさに要求。「ほとんど丸裸状態。途中で破談になれば競合出店などで潰される」と関係者がこぼすほどだった。

価格交渉は150億円をラインにヤマ場を迎えた。発表前日の2月24日、アドバンテッジの笹沼泰助代表と新浪社長との会談が行われたが、交渉は決裂。だが翌25日の電話会談で事態は急展開し、合意に至った。新浪社長は「前日の会談でこちらの本気度が伝わった」と話したという。

今回の買収でローソンの店舗数は、東京23区内で業界トップに躍り出る。西日本では強固な店舗網を持つが、首都圏では王者セブン‐イレブンやファミリーマートが上。「最大マーケットの東京を何とかしたい」(新浪社長)ことは、かねての願いだった。

今後も店舗改装などに最大150億円を追加投資する構え。だが統合には、FC契約の問題や近隣店舗との競合など困難も予想される。01年統合のサークルKサンクスもいまだ明確なシナジーを生み出せていない。粘り強い交渉でようやく手にした東京の店舗網で、ローソンはどこまで成果を出せるのか。

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(田邉佳介 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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